飛鳥 (航空機)

STOL飛行実験機「飛鳥」について

「飛鳥」は、1962年から1989年にかけて国立航空宇宙技術研究所（NAL、現在のJAXA航空技術部門）によって開発されたSTOL（短距離離着陸）飛行実験機です。この機体は特に注目を浴びているものの、実験機であるため製造は1機のみでした。名前は全国の小中学生から募集された結果、「飛鳥」という愛称が選ばれました。

開発の経緯

「飛鳥」の開発は、1962年末から始まりました。当時、V/STOL機の研究開発は非常に注目されるテーマであり、航空宇宙技術研究所では具体的な研究に着手しました。1963年には、STOL機用の超軽量リフトジェットエンジン「JR100」の開発が始まり、推力制御やホバリング試験などさまざまな試験が行われました。しかし、騒音問題が社会で大きな問題となったため、VTOL機の研究開発は一時中断されました。

1975年、航空技術審議会の提言を受けて、STOL技術の検討が再開されました。この時期は、低騒音のファンジェットを使用したSTOL旅客機の開発が期待されたため、技術面の研究が進められました。航空自衛隊のC-1輸送機を基にした実験機の開発が決定され、1977年には「STOLプロジェクト推進本部」が設立されました。この組織は、C-1輸送機の開発を行う川崎重工業などの関係企業とともに、STOL実験機の研究開発を進める役割を担いました。

1978年度からは、C-1を基にした「飛鳥」の機体製造が始まり、1979年には試作機の製造がスタートしました。愛称の「飛鳥」は、全国の小中学生から4,563通の応募の中から選ばれたものです。

初飛行と試験

「飛鳥」は1985年10月28日に初飛行を成功させました。その後、1989年3月までに97回、合計167時間10分の飛行実験を行いました。この間には、NASAとの国際連携研究も行われ、互いの実験機の性能評価が実施されました。

「飛鳥」は、当時の最新技術であるHUDやSCAS等を採用しており、STOL機の性能向上に寄与する技術が試されました。量産化が期待されたものの、地元空港での長さを持つ滑走路の整備が進んだことで、国策としてのSTOL旅客機の重要性は薄れました。また、高コスト開発がSTOL機の実用化を難しくする要因となりました。

飛鳥の仕様と技術

この実験機は、C-1輸送機を基に新しく設計され、NALが開発した日本初の低騒音ターボファンエンジン「FJR710」を4発搭載しています。エンジンは上面排気方式（USB）を採用し、主翼に接して排気されることで、高い揚力を実現しました。また、主翼上面からの排気がフラップを下方に曲げることで大きな揚力を生むようになっています。

機体のスペック

• - 全長: 29.0m
• - 全幅: 30.6m
• - 全高: 10.2m
• - 主翼面積: 120.5m²
• - 全備重量: 38,700kg
• - エンジン: FJR710/600S ×4
• - 推力: 4,290kg
• - 最大速度: 600km/h
• - 航続距離: 1,600km
• - 着陸距離: 480m

現在の状況

「飛鳥」の運用プロジェクトが終了した後、現在は岐阜県の各務原市にある岐阜かかみがはら航空宇宙博物館に展示されています。さらに2025年には日本航空協会によって、重要航空遺産に認定されることが予定されています。この機体は、日本の航空技術の発展において、重要なマイルストーンとなった存在です。

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