飛鳥資料館

飛鳥資料館

奈良県明日香村に位置する飛鳥資料館は、国立の学術機関である奈良文化財研究所が運営する附属施設です。飛鳥時代、倭国の中心地であったこの地域で発掘された貴重な考古資料を収蔵・展示し、飛鳥時代の歴史や文化に関する最新の研究成果を発信しています。

設立の経緯

資料館の建設は、1970年12月18日の閣議決定に端を発します。飛鳥地域で出土した遺物を適切に保管・展示するための施設が必要とされたためです。著名な建築家である谷口吉郎氏の設計により、周囲の景観に調和する数寄屋風のコンクリート建築として建てられ、1975年3月16日に開館しました。開館以来、飛鳥地域で発見された様々な遺物を公開し、この地域の研究における最新の情報も発信し続けています。

展示内容

資料館の常設展示は、第一展示室と第二展示室の二つに分かれています。

第一展示室

第一展示室では、飛鳥地域の宮殿跡、寺院跡、古墳など、多様な遺跡から出土した資料を中心に展示しています。「仏教伝来と蘇我氏」「飛鳥の宮殿」「律令国家への歩み」「飛鳥の古墳」「飛鳥の寺院」といったテーマ別のコーナーが設けられており、飛鳥時代の政治、社会、文化、そして信仰といった多角的な側面を紹介しています。特に、極彩色壁画で知られる高松塚古墳からの出土品など、古代日本の姿を具体的に示す重要な資料が多数展示されています。

第二展示室

第二展示室は、蘇我倉山田石川麻呂が発願して建立されたとされる山田寺（現在の桜井市山田）からの出土品に特化した展示室です。山田寺跡では、1982年の発掘調査により、東回廊の部材の一部が発見されました。この部材は、世界最古の木造建築として名高い法隆寺金堂よりもさらに古い、7世紀半ばのものと推定されており、古代の木造建築技術を知る上で極めて重要な資料です。第二展示室では、出土した東回廊の部材の中でも特に保存状態の良い3間分を用いた、実物大に近い復原展示が行われています。訪れる人々は、古代の壮大な伽藍の一部を間近に感じることができます。

所蔵文化財

飛鳥資料館には、国指定の重要文化財が所蔵されています。主なものとして以下の資料群があります。

石造須弥山及び石造男女像（奈良県高市郡明日香村飛鳥字石神出土）
高松塚古墳出土品
* 奈良県山田寺跡出土品

これらの文化財は、それぞれ飛鳥時代の石造物、古墳、寺院に関する貴重な情報を提供するものであり、古代日本の歴史や文化を研究する上で欠かせない資料となっています。

臨時休館の例

2020年には、新型コロナウイルス感染症の拡大という社会情勢を受け、他の国立博物館などと同様に、2月27日から同年3月15日まで臨時休館の措置が取られました。これは、資料館の運営が社会状況によって影響を受ける一例として記録されています。

アクセス

飛鳥資料館へは公共交通機関を利用してアクセスすることが可能です。近鉄橿原神宮前駅や飛鳥駅から出発する明日香周遊バス（赤かめ）に乗車し、「明日香奥山・飛鳥資料館西」バス停で下車すると便利です。また、近鉄線やJR線の桜井駅からは、奈良交通バスの36系統「明日香奥山・飛鳥資料館西行き」に乗車し、「飛鳥資料館」バス停で下車することもできます。

このように、飛鳥資料館は、飛鳥地域の豊かな歴史や文化を深く知るための重要な施設であり、貴重な出土品や最新の研究成果を通じて、古代日本の理解を深める貴重な機会を提供しています。

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