谷口吉郎

谷口 吉郎 (たにぐち よしろう)

谷口吉郎は、1904年6月24日に石川県金沢市で生まれ、1979年2月2日に亡くなった昭和期を代表する建築家です。彼は東京工業大学の名誉教授として、また数々の名作品の設計者として広く知られています。彼の家族も建築に関わる人々が多く、息子の谷口吉生も建築家として活動しています。また、女婿には淡交社の社長である納屋嘉治がおり、谷口家は建築界でも特異な存在感を示しています。

経歴

谷口は金沢市の九谷焼窯元「谷口金陽堂」の息子として成長しました。彼は石川県師範学校附属小学校や石川県立第二中学校、さらに第四高等学校を卒業した後、1928年に東京帝国大学工学部建築学科を卒業しました。その後、恩師の勧めで東京工業大学に講師として招聘されると、そのまま助教授に昇進し、1932年には東工大水力実験室の設計を手掛けました。

1938年から1939年にかけては、ドイツのベルリンに出張し、日本庭園の造園に関与しました。1942年には「建築物に作用する風圧の研究」で日本建築学会賞学術賞を受賞、1943年には工学博士の学位を取得しました。以降、彼は数回にわたり日本建築学会賞を受賞し、特に1949年と1956年にはそれぞれ藤村記念堂と秩父セメント第2工場の設計により、作品賞を授与されました。さらに、著作「修学院離宮」で毎日出版文化賞を受賞し、1961年には「東宮御所」の設計により日本芸術院賞も受けました。

1965年に定年を迎え、その後名誉教授となりました。1973年には文化功労者として顕彰され、文化勲章を受章する等、彼の実績は広く評価されています。1978年に金沢市の名誉市民第1号として認定され、74歳で生涯を閉じました。彼に贈られた従三位と勲一等瑞宝章は、その功績を象徴しています。彼の墓所は金沢市の野田山墓地にあります。

家族

谷口の父親は江戸時代に九谷焼窯元「金陽堂」を開いた谷口吉次郎で、彼もまた多彩な活動を行っていました。母親のヒサは鉱山技術者の娘であり、家庭も学問と芸術にあふれた環境でした。妻の絹子は建築家の松井清足の娘であり、その系譜を引き継ぐ形で多くの家族が建築界で活躍しています。

長女の真美子は千宗室の二男である納屋嘉治の妻で、女子美術大学を卒業しました。また、長男の谷口吉生も建築家として名高く、二女の真紀子は東京都内での建築教育や企画に寄与しています。

主な作品

谷口吉郎が関与した主な作品は多岐にわたり、洗足の自邸や藤村記念堂、東宮御所、秩父セメント第2工場などが含まれます。彼の作品群は、日本のモダニズム建築の一端を担い、国際的にも評価されています。

余談

谷口は、明治建築の重要な作品である鹿鳴館が取り壊されていく様子を見て、深い哀惜の念を抱いていました。この体験が「博物館明治村」の設立に繋がったとされます。その際に意見が合った名古屋鉄道副社長と共にプロジェクトに尽力しました。

著作・文献

彼はさまざまな著作を残しており、「雪あかり日記」や「せせらぎ日記」、「谷口吉郎著作集」など、建築に関する随想や評論、作品集が発表されています。これらの著作を通じて、彼の考えや建築観を学ぶことができるでしょう。

谷口吉郎の影響力は、今なお日本の建築界に強く根付いており、多くの後進たちに引き継がれています。

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