飯島夏樹

飯島夏樹：生涯を賭けた波と生と死

飯島夏樹（いいじま なつき、1966年8月19日 - 2005年2月28日）は、日本のプロウィンドサーファーであり、日本人として初めてワールドカップに8年連続出場を果たした人物です。愛称は「なっちゃん」。その情熱的な生き方は、多くの人々に勇気と感動を与えました。妻はDJ・エッセイストの飯島寛子。

スポーツへの情熱とウィンドサーフィンとの出会い

東京都八王子市で生まれた飯島は、幼い頃からスポーツ選手を目指し、中学時代には競泳で才能を発揮しました。都立八王子東高校に進学後も水泳部に所属しインターハイを目指しますが、腰の故障により断念。その後、ウィンドサーフィンに出会い、琉球大学教育学部保健体育科に進学し、新たな道を歩み始めます。

プロとしての活躍とハワイへの移住

アマチュアとして出場した米国ゴージの世界大会を機にプロへ転向。大学を中退後ハワイに移住し、ワールドカップを始めとする国内外の大会で輝かしい成績を残し、日本のトップウィンドサーファーとしての地位を確立しました。

主な戦績として、サムタイムワールドカップ・スラローム12位（1989年）、ワールドカップ韓国・コースレース準優勝（1990年）、ワールドカップ年間ランキング29位（1993年）、クアンタンチャレンジ6位（1994年）、アロハクラシック・コースレース6位入賞（1994年）、ワールドカップ年間ランキング32位（1994年。日本人初）などがあります。

1990年1月にはマウイ島で挙式。1994年にはグアムへ移住し、ココス島でマリンスポーツセンターを起業。日本人観光客向けのマリンスポーツ事業を展開する傍ら、中田英寿などスポーツ選手のコーディネートも手掛けました。また、ウィンドサーフィン専門誌「Hi-Wind」にエッセイを連載するなど、文筆家としても才能を発揮しました。

癌との闘いと執筆活動

2002年6月、飯島は肝細胞癌と診断されます。翌年3月には肝移植のため日本へ帰国しますが、セカンドオピニオンの結果、移植は適さないと判断されます。その後、うつ病とパニック障害を併発しますが、家族や友人の支えにより克服。しかし、肝臓癌は悪化の一途を辿り、2004年5月には別の肝臓癌である「肝類上皮血管内皮腫」と診断され、余命宣告を受けました。

癌の発病後、「自分が生かされている」ことを実感した飯島は、偶然の出会いから執筆活動に生き甲斐を見出します。2004年7月には、癌や死をテーマにした小説『天国で君に逢えたら』を刊行。爽やかな読後感が話題となり、ベストセラーとなりました。

2004年8月、飯島は家族と共に慣れ親しんだハワイへ移住。「最期の時まで物書きを続けたい」と、ネット連載『今日も生かされてます』で精力的に執筆活動を続けましたが、2005年2月28日、オアフ島で妻に見守られながら息を引き取りました。

死後も生き続ける飯島の魂

飯島の死後、ネット連載をまとめた『ガンに生かされて』や小説の続編『神様がくれた涙』もベストセラーとなり、彼の作品は多くの人々に読み継がれています。

また、飯島の闘病生活はフジテレビの番組で放映され、2007年には彼の生涯を描いた映画『Life 天国で君に逢えたら』が公開されました。映画の主題歌には、飯島が愛聴していた桑田佳祐の「風の詩を聴かせて」が使用されました。

飯島夏樹は、ウィンドサーファーとして、作家として、そして一人の人間として、その短い生涯を全力で駆け抜けました。彼の残した作品や生き方は、今もなお多くの人々に勇気と希望を与え続けています。

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