飯島清

飯島清：選挙戦略家、政治評論家としての生涯

飯島清（いいじま きよし）は、1930年2月21日に生まれ、1996年4月26日に没した日本の政治評論家、コメンテーター、そして選挙プランナーです。彼の足跡は、単なる評論家という枠を超え、実際の選挙戦略に深く関わり、政治の世界で独自の地位を築きました。

生い立ちと初期の活動

埼玉県児玉郡児玉町で生まれた飯島は、中央大学法学部を卒業後、商事会社経営やサラリーマンを経験しました。その後、「山王クラブ」という政治研究グループを結成し、選挙問題の研究を始めます。また、藤山愛一郎が主催する政治塾「藤山政治大学院」で受講生の指導にあたりました。飯島は「政治を良くするためには選挙制度を良くしなければならない」という信念を持ち、「理想の選挙」を提唱し、レポートを国会議員に配布しますが、その理想論は現実の選挙を知らない者の戯言として一笑に付されることもありました。

藤山愛一郎との出会いと選挙参謀としての出発

1962年、藤山愛一郎が自民党総裁選への出馬を視野に入れる中、飯島は藤山の選挙活動に関わることになります。藤山は、タレントの藤原あきを参院選全国区の候補者として擁立し、飯島に選挙参謀を依頼しました。藤山政治大学院の若手メンバーが選挙スタッフとして選抜され、飯島は小泉純也や原嶋亮二らと共に選挙の中心メンバーとして活動。藤原あきは見事トップ当選を果たし、飯島の選挙参謀としてのキャリアが始まりました。

石原慎太郎の選挙参謀として

1967年、藤原あきの急逝後、飯島は若泉敬の紹介で石原慎太郎と出会います。石原は翌年の参院選出馬に向けて自民党の公認を得ており、飯島に選挙参謀を依頼しました。当初、飯島は固辞していましたが、石原の熱意に根負けし、選対に加わることになります。飯島は、マーケティング理論や社会心理学を応用したイメージ戦略を展開。石原を積極的にメディアに出演させ、「知的イメージ」と「若さ」をアピールしました。その結果、石原は参院選でトップ当選を果たし、飯島の選挙戦略家としての名声を確立しました。

都知事選とその後

1975年、石原慎太郎が東京都知事選に出馬する際も、飯島は選挙参謀として陣頭指揮を執りました。黛敏郎を選挙母体の代表に据え、著名人や統一教会の支援も取り付けましたが、現職の美濃部亮吉に僅差で敗れました。その後、飯島は選挙解説者、政治評論家、コメンテーターとしてテレビ番組に多数出演し、「日曜放談」のレギュラーや自民党洋上大学の講師も務めました。

政府委員からリクルート事件、そして晩年

石原慎太郎を通じて中曽根康弘の知遇を得た飯島は、1985年に政府税制調査会特別委員に任命され、1987年には臨時行政改革推進審議会の土地対策検討委員会のメンバーにも選ばれました。しかし、1988年、リクルートコスモスの未公開株問題が発覚し、約2,200万円の売却益を得ていたことが明らかになると、政府税制調査会特別委員を辞任。「日曜放談」などの番組も降板となり、社会的な信用を失いました。1996年4月26日、飯島清は66歳でその生涯を閉じました。

著書

飯島清は、選挙に関する著書を数多く残しており、その知識と経験を後世に伝えています。

『人の心をつかむ法 科学的選挙戦術応用』（1969年）
『近代選挙入門』（1976年）
『選挙の読み方』（1979年）
『わが家の行革 : スリム時代を生きる技術』（1983年）

飯島清の生涯は、選挙戦略というニッチな分野で才能を発揮し、政治の世界で一定の成功を収めたものの、最後は不祥事によって失脚するという、波瀾万丈なものでした。彼の足跡は、現代の選挙戦略や政治評論に大きな影響を与え続けています。

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