飯沼慾斎

飯沼慾斎（1782年 - 1865年）は、江戸時代後期の医家であり、本草学者として知られています。伊勢国亀山（現在の三重県）に次男として生まれました。

彼は小野蘭山に本草学を学び、その後宇田川榛斎に蘭学を師事しました。大垣で蘭方医を開業し、その名声を確立。文政11年（1828年）には人体解剖も行うなど、医家としても先駆的な存在でした。

60歳を過ぎてもその知識欲は衰えず、自ら「慾斎」と号したことからも、その意欲が窺えます。彼は『草木図説』の執筆に力を注ぐ傍ら、68歳で自ら種痘を試み、70歳を過ぎてからは門弟とともに写真術の研究を始めました。80歳になった際には、博物学、医学、本草学の知識を広めるため、シーボルトとの会見を希望しましたが、シーボルトの帰国により実現には至りませんでした。晩年は足を傷めたものの、山駕籠に乗って深山まで植物採集に出かけたといいます。

明治42年（1909年）には、その功績が認められ従四位が追贈されました。

『草木図説』は、草部20巻、木部10巻、禾本沙草無花部10巻から構成されています。彼の生前に刊行されたのは草部20巻のみでしたが、その価値は時代を経ても色あせることなく、海外でも高く評価されています。牧野富太郎も昭和に入ってから増訂草木図説を出版しており、木部の刊行は死後120年経った昭和52年（1977年）のことでした。彼は日本の植物学の発展に大きく貢献した人物として、その名が残っています。


関連人物
* 小島柳蛙 （甥〈妹・登喜の息子〉） - 写真家

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