飯沼正明

飯沼正明の生涯と業績

飯沼正明（いいぬま まさあき）は、1912年8月2日に長野県南安曇郡に生まれた日本のパイロットです。彼の生家は庄屋を務めた豪農であり、幼少の頃に母と死別し祖母に育てられました。彼の飛行機への憧れは、1924年に地元の空を飛ぶ飛行機を目撃したことから始まります。

初期の経歴

長野県松本市にある旧制松本中学を1931年に卒業後、飯沼は所沢陸軍飛行学校に入学し、飛行機の操縦を学びます。学校では優秀な成績を収め、二等飛行機操縦士の免許を取得した後、陸軍に伍長として任官されます。彼は在学中に藤田雄蔵から指導を受けると共にその助手を務めるなど、確かな技術を磨いていきました。

航空業界での活躍

飯沼は、1934年に大阪から京城（現在のソウル）を経由して北平（現・北京市）への初の航空便を担当し、この時期に多くの重要な飛行業務を手がけました。彼の名が広く知られるようになったのは、1937年4月に行った東京からロンドン間の飛行です。この挑戦は「神風号」と呼ばれる純国産機を使用し、当時の世界記録を樹立するものでした。

飯沼は、立川飛行場を出発し、途中台北や計15都市を経由して4月9日にロンドンのクロイドン飛行場に到着しました。飛行距離は15,357キロメートルで、総飛行時間は94時間を超え、当時の技術では成し得ない快挙とされました。

戦争とその後

飯沼はその後も欧州各国に親善飛行を行い、さまざまな要人と会見を重ねました。しかし、1937年に日中戦争が勃発すると、彼の活動にも変化が訪れます。朝日新聞社は保有する飛行機を軍に提供することを提案し、飯沼も軍務に就くこととなります。

彼は福岡と上海の間で軍用定期便を担当し、1939年には上海で出会った須藤知恵子と結婚しました。1940年には東京からニューヨークへの親善飛行にも参加予定でしたが、日米関係が悪化したことにより計画は中止されます。

最期とその後の評価

1941年、飯沼は陸軍航空本部嘱託としての地位を得て軍用連絡を行い、太平洋戦争の開戦通知を受けた際には、サイゴンで任務に従事していました。しかし、開戦から3日後の12月11日、プノンペンの飛行場で友軍機の事故に巻き込まれ、その生涯を閉じました。彼の死は、日本では「名誉の戦死」として報じられましたが、事実は異なるものでした。

1989年には、飯沼の生家跡地に「飯沼飛行士記念館」が設立され、彼の業績や生涯が多くの人々に知られるきっかけとなっています。飯沼の飛行士としての功績は、彼が生きた時代と戦争を背景に、今なお多くの人に語り継がれています。

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