飯田市歌

飯田市歌について

飯田市歌（いいだしか）は、長野県飯田市の公式な市歌として知られています。この歌は、市の設立を記念して1937年に制定されました。その背景には、飯田町と上飯田町の合併があり、この重要な出来事を祝うために東京の日刊新聞である東京日日新聞（現在の毎日新聞東京本社）が寄贈したものです。作詞には犬塚利国が、作曲には飯田景応が担当しました。

市歌の制定過程

1937年4月1日、下伊那郡の飯田町と上飯田町が合併して新たに飯田市が誕生しました。この新市の誕生を祝うために、東京日日新聞は市歌の歌詞募集を行い、4月25日に結果を発表しました。選ばれた歌詞は松尾村からのもので、市および商工会議所はこの歌の発表演奏会を実施しました。このときに招かれたのは、当時テイチク専属の青葉笙子でした。

当初の市歌は、コロナレコードによって製造されたSP盤で歌われ、有島通男がその歌唱を担当していました。戦後には、ビクターレコードが下島悦子と片桐与によるカバーをリリースしました。また、2006年に制作されたCD『ふるさと飯田の唄』には、ビクターのカバー音源が収録されています。

制定後の経緯

飯田市は、市歌を受け取った際、市民が将来的にこの歌を大切に歌い継いでいくことを期待しました。しかし、他の多くの市町村の歌と同様に、第二次世界大戦によって演奏の場が失われてしまい、歌の存在が忘れられることになったのです。このことについて、1971年に発表された『飯田の昭和史』の著者である坂下広士は、地方の多くの歌が同様な運命を辿っていることを指摘しています。

1952年には、地元の信濃毎日新聞が信越放送の開局を記念して複数の市に対して市歌を寄贈しましたが、この中に含まれていた飯田市市歌（作詞：宮脇至、補作：西條八十、作曲：堀内敬三）は、東日が選定した飯田市歌とは異なる楽曲です。しかし、1957年には新設合併によって旧市歌と新市歌の両方が失効しました。この時点で、公式に認められた市歌は存在しないとして、飯田市では扱われています。

それでも、現在の（新）飯田市では慣習的に両方の市歌が引き継がれ、演奏されています。例えば、CD『ふるさと飯田の唄』には、旧市歌と新市歌の両方が収録されています。さらに、2007年3月31日の市制施行70周年記念式典では、飯田市歌が斉唱され、市役所では毎日正午に飯田市市歌が流されるなど、市民の心に根付いた歌として愛されています。

まとめ

飯田市歌は、長野県飯田市の歴史や文化の象徴としての役割を持ち続ける、一方でその影響や演奏の機会が平時の中でどれだけ確保されているかが問われる歌であると言えます。市民が日常的に歌い続け、地域の一体感を育む存在でありながら、その体験が第二次世界大戦によって途絶えた懸念を持つ市歌のひとつです。このような背景を持ちながらも、現代においても耳にする機会があることは、飯田市歌の持つ魅力の証明とも言えるでしょう。

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