飯道寺

飯道寺について

飯道寺（はんどうじ）は、滋賀県甲賀市に位置する天台宗の寺院で、金奇山（こんきさん）を山号とする修験道の聖地として知られています。かつては南都と密接に関連する山岳寺院で、麓から飯道山の山上にかけて広がるその歴史は、平安時代にまで遡ります。

歴史と背景

飯道山は標高664メートルを誇り、その山上には飯道神社があり、穀物の神である宇賀御魂神や弁才天が祭られています。また、この地方では水を信仰する文化も根付いており、地元の人々の生活と深く結びついていました。山の森林が修験道の基盤となり、飯道権現は森林の保護者とされ、そのための国家の認証も受けています。

飯道寺は、しばしば神社と関連づけられる古い寺院です。『飯道寺古縁起』などの文献によれば、役行者がこの地を開き、後に安敬によって再興されたと伝えられています。ただし、起源に関する正確な記録は存在していないため、後の時代の影響が大きかったこともあります。特に南北朝時代には「飯道寺城」が築かれ、その戦場で多くの歴史的出来事が起こりました。

中世から近世の繁栄

飯道寺は、中世から近世初期にかけて修験道の中心地として栄えました。天正9年（1581年）には織田信長が入山し、寺領を安堵されるなど、武士階級からも大きな支持を受けていました。室町時代には58宇を有した僧房があり、江戸時代にも55宇を数えるなど、その影響力は非常に大きかったのです。しかし、享保19年（1734年）には、住僧が減少し、寺院の衰退が始まりました。

明治時代の転機

明治時代に入り、神仏分離政策により飯道寺も一時廃寺となりましたが、後に本覚院によって再建されました。本覚院は、延宝7年（1679年）の文献に登場し、その名前が神仏分離以降の記録にも表れています。そして、1892年（明治25年）に本覚院は飯道寺の名を受け継ぎ、伝統を再興しました。

修験道と文化的意義

飯道寺は平安時代から鎌倉時代にかけての情報が乏しいものの、飯道神社に保管されている懸仏の仏像は特に重要です。鎌倉時代以降、熊野三山との関係が強まり、当寺にまつわる信仰も発展しました。室町時代以降、梅本院および岩本院は当山派修験の中心寺院としても名を馳せ、全国の修験者を指導していました。

重要文化財

飯道寺には数多くの文化財が存在し、特に以下のものが国指定の重要文化財として残っています：

• - 木造阿弥陀如来坐像（平安時代）
• - 木造十一面観音立像（平安時代）
• - 木造地蔵菩薩立像（鎌倉時代）

これらはすべて旧常福寺から伝わったもので、文化的・歴史的価値が高いものです。

明治時代の神仏分離に際しても文化財の保全が行われ、現在も市指定文化財として「絹本著色両界曼荼羅図」が存在しています。

まとめ

飯道寺は、ただの歴史的な寺院ではなく、地域の信仰と文化を担ってきた重要な場所です。地域住民との深い結びつきを持ちながら、代々にわたり多くの修験者を輩出し、現在も広く親しまれています。

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