飴ガラス

飴ガラス：安全な特殊効果のための代用品

映画やドラマのアクションシーンにおいて、ガラスが割れる演出は観客を興奮させます。しかし、本物のガラスを使用すると、俳優が怪我をする危険性が高いです。そこで用いられるのが「飴ガラス」です。

飴ガラスは、砂糖や澱粉を主成分とした、ガラスに似た外観を持つ加工品です。本物のガラスと異なり、割れても鋭利な破片が飛び散る危険性が低いため、安全に激しいアクションシーンを撮影できます。

製法：砂糖と澱粉の絶妙なバランス

飴ガラスの製造工程は、砂糖とコーンスターチなどの澱粉を水で溶かし、約150℃で加熱して液状にすることから始まります。必要に応じて、カラメルなどで着色し、型に流し込んで冷却することで、様々な形状の飴ガラスを作ることができます。

澱粉は、砂糖の再結晶化を防ぎ、透明で均一な仕上がりを実現するために添加されます。また、クリームタータなどの添加物も、飴ガラスの品質向上に役立っています。冷却と固化のプロセスが適切に行われなければ、結晶化して不透明な仕上がりとなり、使用に耐えられません。

型から取り出した後、ロゴの刻印やラベル貼りなど、必要に応じて装飾を施し、完成となります。原材料は食品なので口にしても害はありませんが、甘みはほとんどありません。

欠点：繊細な性質と管理の難しさ

飴ガラスは、吸湿によって曇りが生じたり、熱で変形しやすいため、長期間の保存が困難です。映画撮影現場では照明の熱によって変形する可能性があるため、使用直前まで冷蔵保存する必要があります。

また、割れやすく、輸送中の破損も懸念されます。これらの理由から、大量生産や作り置きには不向きで、手作りであるため高価になります。近年では、ロジンなどの樹脂製代替品への転換が進んでいます。

飴ガラスは本物のガラスに比べて安全とはいえ、ガラスよりもさらに細かい破片が飛び散る可能性があります。撮影現場での管理が不十分な場合、本物のガラスと取り違えたり、飴ガラスと認識していながら本物のガラスを使用してしまう事故も起こりえます。

有名なアクションスターであるジャッキー・チェンも、過去に飴ガラスの使用を予定していたシーンで、本物のガラスに誤って飛び込んでしまい、負傷した経験があります。彼は「偽物のガラスは危険だ。何故か本物だと怪我をしない。」と発言しており、彼のスタントチームは多くのシーンで本物のガラスを使用していると言われています。

まとめ：安全とリアリティの両立

飴ガラスは、映画やドラマの特殊効果において、安全な代替品として重要な役割を果たしています。しかし、その繊細な性質や管理の難しさから、完全な安全を保証するものではありません。安全な撮影環境の確保のためには、細心の注意と、綿密な準備が不可欠です。飴ガラスは安全性を高めるための手段ではありますが、完璧な安全を約束するものではないことを理解する必要があります。現場での徹底的な管理体制と、俳優やスタッフの安全意識の向上が、安全な撮影を成功させる鍵となります。

参考資料

Thurston James: The Prop Builder's Molding & Casting Handbook* (ISBN 978-1558701281) Betterway Books, 1990

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