ロジン

ロジン：多様な用途を持つ天然樹脂

ロジンは、マツ科植物の樹液である松脂を精製して得られる天然樹脂です。古くから利用され、現代社会においても様々な分野で重要な役割を果たしています。本稿では、ロジンの性質、生産、種類、価格、そして多岐にわたる用途について詳細に解説します。

ロジンの性質

常温では黄色から褐色の透明なガラス状固体として存在します。原料となる松脂には、テレピン油などの揮発性成分が含まれており、これらの成分が蒸発することでロジンが生成されます。その性状は、純度や原料となる樹種、製造方法によって異なりますが、一般的には75℃前後で軟化し、100℃を超えると液体になります。可燃性で、燃焼時には黒煙を発生します。アルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルムには溶解しますが、水には溶けません。粉末状にしたロジンは淡黄色から黄色を呈し、熱を加えると容易に固化します。

ロジンの生産

ロジンの主要生産地は、中国（広西チワン族自治区、広東省、福建省、雲南省、江西省など）、ベトナム、インドネシア、アメリカ合衆国、ニュージーランド、ブラジル、インドなどです。中国は世界最大の生産国であり、年間約60万トンのロジンを生産し、世界の約3/5を占めています。生産地によって使用される樹種は異なり、アメリカ合衆国ではスラッシュマツ、中国ではバビショウ（タイワンアカマツ）、ウンナンマツ、ケシアマツなどが使用されます。また、アメリカから移入されたスラッシュマツも中国で利用されています。

ロジンの種類

ロジンは、生産工程によって大きく3種類に分類されます。

1. ガムロジン（脂松香）: 松の木に傷をつけ、採取した生松脂から揮発性油分（テレピン油）を蒸留分離して得られます。中国では多く生産されていますが、日本では昭和30年代にその生産は途絶えました。
2. ウッドロジン（木松香）: 松の古い切り株をチップ状に加工し、溶剤を使って抽出することで得られます。アメリカ合衆国で1910年に生産が始まり、1950年代には年間30万トンを生産していましたが、切り株の枯渇により生産量は大幅に減少しました。
3. トール油ロジン（浮油松香）: 製紙工場でクラフトパルプを作る際の蒸解廃液から抽出されたトール油を精製することで得られます。アメリカ合衆国で1940年代後半に生産が始まり、現在でも年間約45万トンが生産されています。

ロジンの価格

ロジンの価格は、天然物であるため天候や需要などによって大きく変動します。2009年末以降、原料の生松脂不足と需要増加により、ガムロジンの価格は高騰しました。2009年には1トン約1000ドルでしたが、2010年には2000ドルを超え、2011年には3400ドルにまで達しました。その後、価格は下落しましたが、2013年9月以降は再び2000ドルを超える水準で推移しています。

ロジンの用途

ロジンは、その性質を活かし、様々な用途で使用されています。

日用品

ロジンそのものが直接使用される用途は限られており、野球のロジンバッグ（ロジンと炭酸マグネシウムの混合物）、体操やバレエシューズの滑り止め、弦楽器（ヴァイオリンなど）の弓の滑り止めなどが挙げられます。弦楽器の弓に使用されるロジンは、滑り止めではなく、摩擦力を高めることで弓毛を毛羽立たせるために使用されます。

工業用

ロジンは、工業用途においても広く利用されています。

製紙工業: サイズ剤として、インキのにじみを防ぐために使用されます。
塗料工業: 油ワニス、ラッカー、アルキッド樹脂などに使用されます。また、水素添加した水素化ロジンや、不均化ロジンなど、物性を改質した誘導体も製造され、様々な用途に使用されています。
ゴム工業: 合成ゴムの重合用乳化剤として使用されます。
建材工業: 塩ビタイルの粘結材として使用されます。
製菓材料: チューインガムベースなどに使用されます（一般用途とは異なる規格）。
接着剤: 感圧接着剤、ホットメルト接着剤、ラテックス系接着剤、ゴムセメントなどに添加され、接着力を高めます。
* 医薬用: 絆創膏の接着剤などに配合されることがあります。日本薬局方にも収載されています。

ロジンは、私たちの身の回りにある様々な製品に利用されている、重要な天然資源なのです。

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