養父志乃夫

養父 志乃夫

養父 志乃夫（やぶ しのぶ）氏は、1957年大阪府生まれの日本の農学者、環境学者、そして造園学者です。専門分野は自然生態環境工学であり、現在は和歌山大学システム工学部環境システム学科の自然環境システム大講座にて、大学院博士後期課程の指導教授を務めています。

学歴としては、大阪府立清水谷高等学校を卒業後、1976年に島根大学農学部林学科に入学。1981年に同大学を卒業後、大阪府立大学大学院農学研究科の博士前期課程（園芸農学専攻造園学コース）へ進学し、緑地環境学と造園学を深く学びました。1983年に前期課程を修了し、さらに後期博士課程へ進み、1986年に修了して農学博士号を取得しています。

教育者としてのキャリアは、1984年の大阪芸術大学芸術学部での非常勤講師から始まりました。1987年には東京農業大学短期大学部造園計画学研究室の助手となり、研究と教育の道を歩み始めます。1991年には鹿児島大学農学部の助教授に就任し、1992年からは同大学院連合農学研究科の副指導教官も兼任しました。そして1996年からは和歌山大学システム工学部に移り、現在に至るまで研究・教育活動を展開しています。

養父氏の研究の中心は、自然生態環境工学、特にビオトープの創出や管理、生態系の保全・再生技術にあります。長年にわたり、トンボをはじめとする生きものの生息環境づくりや、野生草花を用いた緑化手法に関する研究を進めてきました。その研究成果の一つである「野生草花による林床景観の育成・管理に関する生態学的研究」は高く評価され、1990年に日本造園学会賞の研究論文部門を受賞しています。

研究活動に加え、社会に向けた発信や貢献も多岐にわたります。1990年から1991年にかけてNHKラジオの「子ども科学電話相談室」で解説者を務め、科学の楽しさを子どもたちに伝えました。また、一般社団法人MIT顧問、環境再生田んぼ実践農民主宰として、実践的な環境再生活動を推進しています。NPO法人日本自然環境学習センターや日本自然学習実践センターの顧問、ビオトープ管理士会関東支部の顧問も務め、環境教育や専門人材育成にも力を入れています。

さらに、国や地方自治体、各種団体の委員としても数多くの要職を歴任してきました。日本造園学会評議員、日本生態系協会学術顧問、国土交通省自然環境アドバイザーなどを務めたほか、建設省（現国土交通省）の沿道生態環境復元手法検討委員会、都市空間における草花による草地等緑化に関する調査研究委員会、生息・生育環境の確保による生物多様性の保全及び活用手法調査検討会など、緑化、生態系調査、自然環境計画、環境影響評価に関する様々な委員会に参画。これらの活動を通じて、自然と共生する社会基盤整備や地域計画策定に専門的知見を提供し、日本の自然環境保全や再生の現場に深く関わっています。

その豊富な知識と経験は、多くの著作にまとめられています。単著としては『ビオトープづくり実践帳』、『田んぼビオトープ入門』、『ホームビオトープ入門』、『ビオトープ再生技術入門』など、ビオトープに関する実践的な入門書が広く読まれています。また、『野生草花による景観の創造』、『生きもののすむ環境づくり－トンボ編－』といった専門書に加え、『里山・里海 暮らし図鑑』、『アジアの里山食生活図鑑』など、里山文化や生態系と人々の暮らしの関係に光を当てる著作も手がけています。共著も多数あり、『ビオトープの構造―ハビタットエコロジー入門』、『ランドスケープエコロジー』、『自然生態修復工学入門』、『自然環境復元の技術』、『緑地生態学』、『エコロード』など、緑化技術、生態工学、環境復元、景観設計といった幅広いテーマで専門的な知見を共有しています。

所属学会は、日本緑化工学会、日本造園学会、日本生態学会、日本都市計画学会、土木学会、農村計画学会など多岐にわたり、関連分野における学術的交流や社会提言にも積極的に貢献しています。

養父志乃夫氏は、研究、教育、社会活動、そして執筆活動を通じて、自然生態環境工学および造園学の発展に寄与し、特にビオトープや生態系保全の実践的な取り組みにおいて、日本の第一線で活躍し続けている研究者・教育者です。

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