餓鬼草紙

餓鬼草紙について

餓鬼草紙（がきぞうし、がきそうし）は、主に餓鬼道の世界をテーマにした日本の絵巻です。この作品は、「正法念処経」に基づき、現世での行いや行いに対する結果を描いています。餓鬼道とは、生前の行いが原因となり、来世で苦しむ存在を指します。このような因果関係が視覚的に表現されており、見る者に深い思想をもたらします。

制作背景

餓鬼草紙の制作は、平安時代末期から鎌倉時代初頭にかけて行われました。この時期は社会情勢が非常に不安定で、戦乱や飢饉などが続いたため、六道思想が広く受け入れられていました。道徳的な教訓をもたらす作品として、多くの人々の関心を集めたと考えられています。

現存する餓鬼草紙

競って存在する餓鬼草紙は、いくつかの重要な本があります。その中でも特に有名なものは以下の二つです。

旧河本家本

この本は、東京国立博物館に所蔵されています。通称は東博本で、河本家から伝来しました。サイズは縦26.9 cm、全長は380.2 cmです。1952年（昭和27年）に国宝に指定され、指定名は「紙本著色餓鬼草紙〈絵十図〉」です。

内容は、さまざまな餓鬼たちを描いており、欲色餓鬼や食水餓鬼などが見られるのが特徴です。この作品も後白河法皇の蓮華王院三十三間堂の宝蔵から来たもので、詞書は失われていますが、絵が豊かな色彩で描かれています。

旧曹源寺本

もう一つの重要な本が、京都国立博物館に所蔵されている旧曹源寺本です。通称は京博本で、サイズは縦26.8 cm、全長538.4 cmです。こちらも1953年（昭和28年）に国宝に指定され、正式名称は「紙本著色餓鬼草紙」です。

この本は、後白河法皇が所蔵していた「六道絵」の一部とされており、『盂蘭盆経』の内容に基づいて、目連尊者が餓鬼道に堕ちた母を救った物語などを生き生きと描写しています。また、阿難尊者が施餓鬼を行う経緯や仏が食水餓鬼を救う場面も描かれています。

結論

餓鬼草紙は、日本の中世絵画の中でも特に重要な作品であり、因果の教えや道徳的メッセージを視覚的に表現する手段として、今なお人々を魅了しています。このような作品を通じて、私たちは過去の人々の価値観や信仰を知ることができ、またそれを通じて現代の私たち自身についても考えるきっかけとなるでしょう。絵巻物としての芸術性とともに、深い哲学を伝える餓鬼草紙の世界を堪能することができます。

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