首相官邸ネズミ捕獲長

首相官邸ネズミ捕獲長について

首相官邸ネズミ捕獲長（Chief Mouser to the Cabinet Office）は、イギリスのダウニング街10番地、つまり首相の官邸で公式に飼われる猫に与えられる特別な肩書きです。この肩書きは、イギリスの歴史の中で長い間、ネズミ対策として猫が「雇われてきた」伝統に基づいています。実はこの伝統は、1500年代にまで遡ります。当時からダウニング街にはネズミが多く、その対策として猫を飼うことが通常の方法でした。

1924年以降、この役割は「首相官邸ネズミ捕獲長」として公式に認められました。この役職は、ネズミを捕まえることだけではなく、官邸で愛される存在としても知られているのです。最も長くこの職を務めた猫はウィルバーフォースであり、彼はエドワード・ヒースやマーガレット・サッチャーなど、数人の首相の下で14年間もその任務を果たしました。

身分と給与

首相官邸のネズミ捕獲長たちは、実は公務員として位置づけられており、首相の私物ではありません。そのため、彼らの「任期」が首相の任期と重なることは少ないのが特徴です。もともとこの肩書き自体は非公式でしたが、猫のハンフリーには正式にこの肩書きが与えられました。その他の猫については、主にイギリスのマスコミから愛称としてこの肩書きが使われています。

給与については、年間100ポンドほどが生活費として認められており、職員が用意するおやつ代は自己負担です。また、猫たちも人間の公務員と同様に定期的な健康診断を受けています。

歴史的背景

この猫たちがネズミ捕獲役として「雇われた」背景には、ヘンリー8世の時代にまで遡ります。当時ウルジー枢機卿の飼い猫が傍らに置かれたことから、この習慣が始まりました。2005年には、「2000年情報自由法」の一環として公開された文書によれば、1929年当時は有能な猫の生活費として一日一ペニーを支出することが認められていました。これは、職務の重要性が認識されていた証拠と言えるでしょう。

近年では、2011年にデーヴィッド・キャメロン首相のもとで、ラリーという猫が新たにネズミ捕獲長として雇われることになりました。そのきっかけは、首相官邸近くで目撃されたネズミの群れでした。官邸内での衛生問題を解決するため、ラリーが選ばれたのです。しかし、ラリーは2012年9月に職務への関心が低下し、結果的に更迭されるに至りました。

その後、新たにフレイヤという猫が後任として任命され、外での生活経験から高い職務遂行能力が期待されました。フレイヤは2014年に事故に遭い、引退することになり、再びラリーが単独で任務を引き受けることとなります。それでも、ラリーは新たな首相のテリーザ・メイのもとでも留任が決まります。

他の省庁と猫たち

このように、首相官邸以外の省庁でもネズミ捕獲長としての役職が存在します。たとえば、2016年には保護施設からの引き取り猫パーマストンが外務省のネズミ捕獲長に就任しました。さらに、2017年には在ヨルダンの英国大使館にも同様のポストが設けられました。大蔵省でも、グラッドストンという猫が採用され、その名は4度の首相を務めたウィリアム・グラッドストンに由来しています。

このように、イギリスにおける天才的なネズミ捕獲者たちは、猫たち自身の役割を果たしつつ、国民から愛されています。今日でも彼らは官邸で重要な任務を遂行し、憩いの存在として人々に親しまれています。

もう一度検索