香林院

香林院（こうりんいん）：大石良雄の妻、波乱の生涯

香林院、通称りくは、江戸時代前期、赤穂藩家老・大石良雄の妻として知られています。但馬国豊岡藩京極家の家老、石束毎公の長女として生まれ、1200石を領する名家に育ちました。大柄な体格で、身長は6尺（約180センチ）あったという記録も残っています。

貞享4年（1687年）、りくは大石良雄と結婚、赤穂城に移り住みます。良雄との間に、長男松之丞（後の大石良金）、長女くう、次男吉千代、次女るりをもうけました。良雄には妾がおり、その間に生まれた娘が夭折したという記録も残されています。

元禄14年（1701年）、浅野長矩の刃傷事件が勃発。赤穂藩は取り潰され、良雄は一時的に但馬の実家に戻りました。その後、山科に移り住んだのち、元禄15年（1702年）、良雄の赤穂浪士による吉良義央への討ち入り計画への関与を防ぐため、りくは他の子供たちと共に再び豊岡の実家に戻され、良雄と一時的に離れ離れとなります。その間、りくは三男、大石大三郎を出産しました。

赤穂浪士による討ち入りの後、良雄と良金は切腹。りくは、残された子供たちの養育に尽力しました。長女くうと次男吉千代は若くして亡くなりましたが、次女るりと三男大三郎は成長しました。宝永6年（1709年）、徳川家宣による大赦により、義士の遺児への恩赦が行われ、大三郎は広島藩浅野家に仕官。後に御番頭となり、父と同じ1500石を領しました。次女るりは浅野家一族と結婚しました。しかし、るりの娘は早世し、大三郎の子孫も途絶えたため、りくの血脈は残っていません。

落飾後、香林院と称したりくは、広島藩から隠居料として100石を支給され、元文元年（1736年）に68歳で亡くなりました。広島の国泰寺に葬られましたが、昭和20年（1945年）の原爆投下で墓は消失。昭和53年（1978年）、国泰寺移転に伴い供養塔が建立されました。豊岡市には、りくの生誕碑や遺髪塚も残されています。戦後には「大石りく祭り」が豊岡市で行われていましたが、2017年に終了しています。

香林院りくは、激動の時代を生き抜き、家族のために尽くした女性でした。彼女の生涯は、忠臣蔵という歴史的事件の中で、女性の一面を深く知る上で重要な存在と言えるでしょう。その生き様は、現代においても多くの人々に感銘を与え続けています。

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