大石大三郎

大石大三郎：父の遺志を継ぎ、広島藩に生きた武士

大石大三郎（おおいし だいさぶろう）は、元禄15年（1702年）に、赤穂浪士として名高い大石良雄の三男として生まれました。幼名は良恭（よしやす）。後に代三郎、外衛と名を変えています。

生い立ちと赤穂事件

大三郎が生まれた時、父良雄は浅野家再興を断念し、吉良邸討ち入りを計画していました。そのため、母りくは連座を避けるため、実家のある豊岡で大三郎を出産しました。しかし、父良雄は討ち入り後、切腹。大三郎は父の死という大きな悲しみを背負って幼少期を過ごすことになります。

宝永6年（1709年）、将軍が家宣に代わると、赤穂浪士の遺児に対する大赦が行われました。これにより、大三郎は広島藩浅野本家から藩士として迎えられることになります。当時、兄の吉之進は早世していたため、良雄の男子としては唯一の生存者でした。正徳3年（1713年）に12歳で広島藩に仕官し、父と同じ1500石の知行と、広島城二の丸の屋敷を与えられました。

母りくは書類上離婚していたものの、後に大石姓への復籍が認められ、大三郎は「石束流大石氏」として仕官。他の義士の遺児が出家や改姓、養子縁組で他家に仕える中、大石姓を名乗ることができたのは当時としては珍しいことでした。

結婚と藩での活躍

享保2年（1717年）に元服した大三郎は、享保6年（1721年）に藩主浅野吉長の命で浅野氏一族の娘と結婚しますが、うまくいかずに離縁。その後も二度結婚と離縁を繰り返しました。

広島藩では、旗奉行次席、番頭、奏者頭など重職を歴任しましたが、言葉が不自由だったとも伝えられており、発達障害があった可能性も指摘されています。また、随筆『翁草』には品行が良くなかったという記述も残っています。

隠居と晩年

明和5年（1768年）に隠居した大三郎には、二人の男子がいましたが、いずれも妾腹であったため、小山良尚を養子に迎え、家督を継がせました（小山流大石氏）。明和7年（1770年）に69歳で死去。広島の国泰寺に葬られました。しかし、昭和20年（1945年）の原爆投下により墓は全焼全壊。昭和53年（1978年）に国泰寺が移転した際、墓も再建されました。

人物評と後世への影響

三田村鳶魚の著書には、大三郎が梅毒を患い鼻が欠けていたという記述がありますが、大石家の減封は大三郎ではなく、養子の大石良尚の代であり、理由は良尚が病弱だったためとされています。

大三郎は、父良雄の血を受け継ぎ、波乱に満ちた人生を送りました。その生涯は、山田風太郎の小説「大石大三郎の不幸な報い」や、平岩弓枝の小説「花影の花」など、後世の多くの作品に影響を与えています。江戸の泉岳寺には、大三郎から最後の大石家当主・多久造までの歴代の墓が現存しており、大石家の歴史を今に伝えています。

大石良雄の血脈は、大三郎の養子に引き継がれました。実子はいなかったため、良金は子がなく切腹、良以は出家、くうは独身、るりは男子がなく娘も早世、覚運は養子であり、良雄の血脈を残してはいません。

大三郎は、父の遺志を胸に、激動の時代を生き抜いた武士でした。その生涯は、赤穂事件という歴史の大きな流れの中で、複雑な人間模様を描き出し、現代においても多くの人々に語り継がれています。

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