香港司法機構

香港の司法機構は、香港特別行政区における司法府であり、終審法院を頂点とする各種法院（裁判所）によって構成されています。司法機構の長は終審法院首席法官が務め、その事務部門は高等法院ビルの地下に位置しています。この司法機構は、香港の法体系を支える重要な役割を担っています。

法院および法廷

香港の法院システムは、終審法院、高等法院、区域法院という3つの主要な法院を中心に構成されています。特徴的なのは、高等法院が第一審と上訴審の両方の役割を担っている点です。また、裁判法院や各種審裁・仲裁処も存在し、日本と比較するとやや複雑な構造となっています。

終審法院 (Court of Final Appeal)
香港の最高裁判所に相当し、司法機構の長である終審法院首席法官がトップを務めます。
上訴・上告のみを扱い、香港の法律を解釈する権限を持ちます。
ただし、香港基本法の解釈権は全国人民代表大会常務委員会にあり、終審法院にはありません。
1997年の香港返還後に設置され、それまではイギリス枢密院司法委員会が最終審を担っていました。

高等法院 (High Court)
日本の高等裁判所に相当しますが、原訟法廷と上訴法廷の二つで構成されています。
返還前は「最高法院」と呼ばれていましたが、終審法院の設置により現在の名称に変更されました。
原訟法廷: 香港における最高レベルの第一審法廷であり、返還前の「原訟法院」に相当します。
上訴法廷: 下級裁判所からの上告・上訴を扱います。返還前の「上訴法院」に相当します。

区域法院 (District Court)
日本の地方裁判所に相当し、民事事件と比較的重大な刑事事件の第一審を扱います。
行政区画とは対応していません。
返還前は「地方法院」と呼ばれていました。

家事法廷
日本の家庭裁判所に相当する機能を持ち、家庭内の紛争や離婚などを扱います。

裁判法院 (Magistrates' Court)
刑事事件を扱う裁判所であり、ほとんどの刑事事件の第一審を担当します。
重大事件の場合は、区域法院や高等法院原訟法廷に移管されることがあります。
行政区画とは対応していません。
裁判官は「裁判官」と表記されます。

少年法廷
未成年者が関与する刑事事件を専門に扱います。

土地審裁処
土地に関する紛争を審理します。賠償額に上限はありません。

労資審裁処
労働者と雇用者の間の紛争を審理します。

小額錢債審裁処
少額の民事訴訟を扱う簡易裁判所に相当します。5万香港ドル以下の事件を扱い、弁護士を立てることはできません。
他の法院や審裁処に移管されることもあります。

淫褻物品審裁処
猥褻な出版物や映像作品に関する審理を行います。
裁判官と民間から任命された審裁委員が審理を担当します。

死因裁判法庭
* 律政司から送付された不審な死亡に関する死因を審理します。死因は、自然死、事故死、不運な死、他殺に分類されます。

法官（裁判官）の任命

終審法院首席法官と高等法院首席法官は、行政長官が指名し、立法会の承認を経て、全人代常務委員会が任命します。これらの首席法官は、外国の永住権を持たない中国公民であることが求められます。その他の法官は、独立委員会によって推薦され、行政長官が任命します。また、普通法を採用する外国から任用することも可能です。

陪審員制度

香港には陪審員制度があり、21歳以上65歳未満の香港住民が抽選で選ばれます。選ばれた場合、正当な理由がない限り拒否することはできません。また、雇用主は従業員の陪審員への参加を妨害することが禁止されており、違反した場合は罰金と懲役刑が科せられます。

この制度は、市民が司法に参加する重要な機会を提供しています。

外部リンク

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