馬場用水

馬場用水

馬場用水は、埼玉県久喜市（旧久喜町域）を灌漑していた農業用水路です。かつては地域の農業を支える重要な役割を担っていましたが、都市化の進展に伴い、その姿を変えつつあります。

概要

久喜市の旧市街地は、北西から南東にかけて台地が形成されており、その上に町が発展しました。馬場用水は、この台地の北側に広がる低地の水田を潤していました。武藏國郡村誌にも記述が見られるこの用水路は、かつて久喜町にとって主要な灌漑用水路でしたが、現在では市街化や宅地化の影響で農業用水としての需要が減少し、その多くが都市排水路として利用されています。一部区間は開渠として残っていますが、暗渠化されたり、埋め立てられたりした箇所も多く、特に久喜中央4丁目・1丁目付近では、その流路跡が市道として利用されているため、痕跡を辿ることができます。

起点付近では、本町小学校建設の際に流路が変更されました。かつての流路は学校敷地の中央部を流れていましたが、現在は学校敷地の南側を流れるように付け替えられています。また、起点付近から流れてくる水流のほとんどは、農業用水の需要が減少したため、本町小学校の北側に整備された排水路に導水されています。この分水路は中落堀川へと合流しています。また、別の残存流路は、都市排水路として機能しており、本町8丁目のトイザらス駐車場建設の際に一部が整備されました。駐車場より下流の開渠区間は、ほぼ元の流路を保っています。

流路

現存流路1

水源: 本一用水
久喜本字新堀（西側）、久喜本字大浦（北東側）、久喜本字道合（南東側）の境界付近（現在のコーポランド団地西方）で本一用水から分水し、東へ流れます。
市道久喜30号線を暗渠で横断し、住宅団地内の市道南側を暗渠として東へ流れます。
さいたま栗橋線を横断し、開渠となり本町7丁目を東へ流れます。
本町小学校西部で「馬場中橋」から北へ分水し、馬場用水は本町小学校南側の市道沿いに南へ流れ、学校敷地南端で市道に沿って東北東へ流れます。

現存水路2

甘棠院の東方で、本町8丁目のほぼ中央部を市道沿いに南東へ流れます。（開渠）
市役所通り付近で地下水路化（土管など）します。
市役所通り付近から水路は確認できませんが、本町8丁目地内では流路と並行していた市道がほぼ馬場用水の跡となっています。

分水路

馬場中橋で馬場用水から分水し、本町小学校西側敷地沿いに北北東へ流れます。
幸手新道付近で一度南東へ流れ、その後幸手新道を北側へ横断し、市道西側の歩道下を暗渠として北北東に流れます。
中落堀川橋梁「中落橋」の西側で中落堀川に合流します。

旧流路

水源: 本一用水
久喜本西部（久喜本字新堀、久喜本字大浦、久喜本字道合の境界付近）で本一用水から分水し、東へ流れます。
大宮栗橋線（現在のさいたま栗橋線）を横断し、久喜本字大浦（北側）と久喜本字馬場（南側）の境界付近を蛇行しながら東へ流れます。（高田堀の南方）
久喜本字馬場の東方で南南東へ向きを変え、中落堀川の西側に並行して久喜本字五領方面へ流れます。
鷲宮へ至る町道（現在の市役所通り）付近で南東へ向きを変え、久喜本字五領、字荒鎌などを流れます。
久喜新字下谷へと至ります。

橋梁

現存流路1

市道：久喜30号線（六万部久喜停車場線新道の延伸）
埼玉県道3号さいたま栗橋線
馬場中橋
馬場上橋
市道橋梁

分水路

馬場中橋
馬場下橋

過去

高田堀上の掛樋 (1968年頃)
埼玉県道36号大宮栗橋線
鷲宮へ至る町道（現市役所通り）
町道

流域周辺の施設

埼玉県立久喜北陽高等学校
久喜市立本町小学校
甘棠院

まとめ

馬場用水は、久喜市の発展とともにその姿を変えてきました。かつての農業用水路としての役割は薄れましたが、その痕跡は今もなお、市内のあちらこちらに残っています。この用水路の変遷は、地域の歴史と都市化の過程を物語る貴重な証拠と言えるでしょう。

脚注

久喜市都市計画図
『第2回企画展　地図資料で見るむかしの久喜市』　久喜市公文書館
第5回企画展 図録『絵図にみる久喜の歴史』（8ページ）』　久喜市公文書館
国土地理院 地図・空中写真閲覧サービス
流域周辺（1947年10月28日撮影）
流域周辺（1948年1月5日撮影）
流域周辺（1961年5月30日撮影）
流域周辺（1967年8月7日撮影）
流域周辺（1975年1月6日撮影）
流域周辺（1980年10月15日撮影）
流域周辺（1986年9月11日撮影）
流域周辺（1990年11月1日撮影）
流域周辺（2009年4月23日撮影）

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