駒台

将棋における駒台：歴史、材質、そして発明秘話

将棋の駒台は、取った駒（持ち駒）を置くための台です。一見すると単純な用具ですが、将棋のルールや歴史、文化を深く理解する上で重要な役割を担っています。この記事では、駒台の機能、歴史、材質、形状、そしてその発明に関する興味深いエピソードを紹介します。

駒台の役割とマナー

将棋では、取った駒を再び盤上に置いて使うことができます。そのため、持ち駒は重要な情報であり、常に公開する必要があります。駒台に持ち駒を置くことで、対戦相手は自分の持ち駒を把握でき、ゲームの透明性を確保できます。手に握ったり隠したりする行為は「隠し駒」と呼ばれ、反則となります。

駒台は通常、二つの台が一組となり、将棋盤の右側に置かれます。これは一般的なマナーですが、歴史的には左側に置かれた例もあり、日露戦争で右手を負傷した大崎熊雄九段は左側に駒台を置いていたという逸話も残っています。

駒台の材質と形状

駒台の材質は、将棋盤とは異なることが好ましく、盤よりもやや暗い色の木材が用いられることが多いです。特に、杢（もく）の美しい銘木で作られた駒台は高価で、愛好家から珍重されます。中には、駒箱と同じ木材を使用しているものもあります。

高さは将棋盤よりも少し低く、天面のサイズは十数枚の駒を置くのに十分な広さです。理論上は持ち駒は最大38枚に達する可能性がありますが、プロの対局で20枚以上の持ち駒になることは稀です。

将棋盤が厚いタイプの場合は、駒台に足が付いているものが一般的で、一本足または四本足のものがあります。一方、卓上などで使用する足のない将棋盤には、それに合わせた高さの駒台が使用されます。

駒台の誕生と発明者

意外なことに、駒台は比較的新しい発明です。江戸時代には存在せず、明治時代後期に考案されたと考えられています。それ以前は、駒箱や懐紙を盤の横に置いて、駒置きとして使用していたようです。

十三世名人関根金次郎は、駒台の発明に関する随筆を残しています。それによると、駒台の考案者は飯塚力造という人物で、品川で貸座敷を営む愛棋家だったとされています。飯塚は関根と共に京橋に帝国将棋所を設立し、そのスポンサーも務めたと言われています。

まとめ

一見すると小さな用具である駒台ですが、その歴史や材質、形状には、将棋文化の深みと、人々の創意工夫が凝縮されています。将棋の対局を行う際には、駒台の存在に改めて注目し、その役割や歴史的背景を理解することで、より一層将棋を楽しむことができるでしょう。 駒台は単なる駒置きではなく、将棋の歴史と文化を語る上で欠かせない存在なのです。

参考文献

山本亨介『将棋庶民史』（朝日新聞社、1972年）46頁
大内延介『将棋の世界』（角川書店、1993年）130・131頁
団鬼六編『日本の名随筆　別巻8　将棋』（作品社、1991年）
関根金治郎　駒台の発案者（青空文庫）

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