駒形十吉

駒形十吉：波乱の生涯と新潟経済への貢献

駒形十吉（1901-1999）は、20世紀の日本経済、特に新潟経済に大きな影響を与えた実業家です。米穀・味噌醤油醸造業を営む家に生まれた彼は、旧制新潟高等学校を中退後、大阪で株式取引の経験を積み、家業を継ぎました。その後、金融機関やメディア業界で成功を収めましたが、その生涯は順風満帆とは言い難く、数々の事件やスキャンダルにも巻き込まれました。

大光相互銀行：成功と転落

1928年、駒形は北陸産業無尽の設立に参画、支配人を経て社長に就任。その後、大光相互銀行へと発展させました。彼は政財界に幅広い人脈を持ち、特に田中角栄との親密な関係は有名です。しかし、その一方で、銀行資金の私的流用や不正融資などの告発を受け、1970年には会長に退任しました。後任の婿養子も不正行為に関与し、銀行は経営危機に陥り、上場廃止に追い込まれました。しかし、大光相互銀行はその後、関係各所の支援を受け、再建を果たしました。この銀行における駒形十吉の功績と失態は、日本の戦後経済史における重要な事例として、現在も語り継がれています。

新潟総合テレビ（NST）：メディア界への進出

駒形十吉は、新潟総合テレビ（NST）の設立にも中心的な役割を果たしました。初代社長の急死後、社長に就任すると、徹底したコスト削減と番組編成で、短期間でNSTを県内有数の企業へと成長させました。キー局との関係を巧みに操り、番組ネット保障費の釣り上げにも成功しています。彼は98歳で死去するまで社長職に留まり、長きにわたる経営手腕を見せつけました。しかし、その経営手法は、後に批判の対象となることもありました。

新潟経済界への貢献と美術品収集

駒形十吉は、大光相互銀行やNSTの経営以外にも、長岡商工会議所会頭、長岡まつりの復興など、長岡市の発展に貢献しました。また、地元若手経済人への指導にも力を入れ、多くの経済人を育成しました。さらに、彼は現代美術の熱心なコレクターとしても知られており、「大光コレクション」は有名です。長岡現代美術館の設立にも尽力しましたが、大光相互の経営危機に伴い閉鎖、コレクションの一部は売却されました。現在、残されたコレクションは新潟県立近代美術館などに収蔵されています。

人脈と晩年

駒形十吉は、鹿内信隆や中山素平など、中央政財界に多くの有力な人脈を持っていました。その人脈と手腕は、彼のビジネスにおける成功に大きく貢献しました。晩年は腸閉塞の手術を受け、その後、急性心不全のため98歳で死去しました。

まとめ

駒形十吉は、成功と失敗、貢献と批判が入り混じった複雑な人物です。彼の生涯は、戦後の日本経済の激動と、地方経済の発展、メディア業界の変遷を反映しています。彼の功績と過ちは、後世への教訓となるでしょう。彼の生き様は、現代社会においても、成功と責任、そして倫理について考えるきっかけを与えてくれます。彼の業績は、新潟経済史、そして日本の戦後経済史において、重要な一ページを飾っていると言えるでしょう。

もう一度検索