高可用性

可用性(High Availability:HA)徹底解説



近年、システム障害によるサービス停止は、企業にとって大きな損失につながります。そのため、システムの安定稼働と、万一の障害発生時でもサービス提供を継続できる仕組みが不可欠です。そこで重要となるのが「高可用性(High Availability:HA)」です。

可用性の概念



可用性とは、システムが常に利用可能な状態を維持し、サービス停止時間を極力短くすることを意味します。具体的には、システム障害やハードウェア故障、自然災害など、様々な要因によるサービス停止を最小限に抑えるための設計・運用体制を指します。HAシステムは、高い信頼性と可用性を求められるシステムに不可欠です。

可用性を実現する構成例



HAを実現する方法は様々ですが、代表的な構成例を以下に示します。

1. コールドスタンバイ構成



予備サーバを用意し、本番サーバに障害が発生した場合に、予備サーバに切り替えてサービスを継続する構成です。予備サーバは通常動作しておらず、障害発生時に手動または自動で起動します。初期設定やデータ同期に時間がかかるため、サービス停止時間は長くなりますが、コストを抑えられるメリットがあります。

2. ホットスタンバイ構成



予備サーバを常時稼働させておき、本番サーバに障害が発生した場合に、自動的に予備サーバに切り替える構成です。サービス停止時間はコールドスタンバイ構成よりも短く、可用性を高められます。しかし、予備サーバの運用・保守コストがかかります。また、フェールオーバー時の切り替え検証も必要となるため、設計・運用が複雑になります。

3. アクティブ-アクティブ構成(負荷分散構成)



複数のサーバが同時に稼働し、負荷を分散することで、高い可用性とパフォーマンスを実現する構成です。1台のサーバに障害が発生しても、他のサーバがサービスを継続するため、サービス停止時間はほぼゼロに抑えられます。データベースなどのデータ整合性が必要なシステムでは、データの書き込みをどのように行うかが重要な課題となります。例えば、リードレプリカを用いて読み込みは複数サーバから行い、書き込みはマスターサーバに集中させるといった手法が用いられます。

4. 災害対策構成



地理的に離れた場所にデータセンターを構築し、災害などによって主要データセンターが使用できなくなった場合でも、サービスを継続できる構成です。大規模な災害やテロなど、広範囲に影響を及ぼすリスクへの対策として有効です。

可用性を実現するための要素



可用性を確保するためには、以下の要素が重要となります。

冗長化: ハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどを二重化することで、単一障害点の発生を防ぎます。
自動化: 障害発生時の切り替えを自動化することで、人的ミスや復旧時間を最小限に抑えます。
監視: システムの状態を常時監視し、障害発生を早期に検知します。
バックアップ: 定期的にデータのバックアップを行い、データ損失を防ぎます。
災害対策: 自然災害などによる障害に備え、災害対策計画を策定・実行します。

関連用語



可用性
システム運用
ITIL
フォールトトレラント性
フォールトトレラントシステム

まとめ



可用性(HA)は、システムの安定稼働と、障害発生時の迅速な復旧を確保するために不可欠な概念です。適切な構成を選択し、冗長化、自動化、監視、バックアップなどの対策を組み合わせることで、ビジネスの継続性を高めることができます。それぞれの構成にはメリット・デメリットがあるため、システムの規模や重要度、コストなどを考慮し、最適なHA構成を選択することが重要です。

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。