高地性集落

高地性集落とは

高地性集落とは、弥生時代中期から後期にかけて、平地よりも数十メートル以上高い場所に作られた集落のことです。周囲を見渡せる山頂や丘陵の尾根などに位置し、平野や海を一望できるのが特徴です。

概要

弥生時代の集落は、周囲に濠を巡らせた環濠集落が一般的で、水田に近い平野部や台地に作られていました。しかし、高地性集落は、農耕に適さない山地に見つかっています。そのため、その目的や性格について様々な議論がなされてきました。

有力な説は、軍事的な目的があったとするものです。高地から周囲を監視し、敵の侵入に備える「逃げ城」や、狼煙を上げる場所としての役割が考えられています。多くの遺跡から焼けた跡が見つかっており、狼煙台であった可能性も指摘されています。

しかし、高地性集落からは、同時期の平地集落とほぼ同じ内容の遺物も発見されています。そのため、単なる監視所や狼煙台ではなく、一定期間、人々が生活を営んでいた場所であると考えられています。

分布と特徴

高地性集落は、弥生時代中期には中部瀬戸内と大阪湾岸に、後期には近畿とその周辺部に集中して分布しています。古墳時代前期には、西日本の広島・鳥取や、北陸の富山・石川・新潟にも見られますが、北部九州には見られません。

集落遺跡の多くは、平地や海を広く見渡せる高所に位置し、西方からの侵入に備えた構造になっています。また、狩猟用としては大きすぎる石鏃（石の矢尻）が多く発見されているのも特徴です。

これらのことから、高地性集落は、軍事的な性格の強い集落であると考えられています。しかし、同時期の平地遺跡とほぼ同じ遺物が見つかっていることから、単なる監視所や狼煙台ではなく、人々が居住していた場所であることもわかっています。

社会背景

高地性集落の分布状況から、弥生中期から後期にかけて、北部九州・瀬戸内沿岸・畿内の地域間で軍事的な衝突を伴う政治的紛争が頻発していたと推測されています。畿内を中心とした地域で進められていた統合・連合の動きが、背景にあったと考えられています。

豊中市勝部遺跡からは、石槍が背中に刺さった遺体や、石鏃が数本打ち込まれた遺体も発見されており、当時の争乱の激しさを物語っています。また、弥生中期から後期という時代に着目し、中国の史書に登場する倭国王の出現や、倭国大乱との関連を重視する見方もあります。

近年では、高地性集落を特殊な集落として捉えるのではなく、他の環濠集落や非環濠集落との関連性に着目し、地域の拠点となる集落と、その他の集落という関係で見直す動きも出ています。

主な遺跡

扇谷遺跡（京都府京丹後市）：日本最古の高地性集落遺跡
紫雲出山遺跡（香川県三豊市）：標高352メートル
石清尾山古墳群（香川県高松市）：標高232メートル
八堂山遺跡（愛媛県西条市）：標高196.5メートル
大山神社遺跡（兵庫県姫路市）：標高220メートル
伯母野山遺跡（神戸市）：標高130メートル
会下山遺跡（芦屋市）：標高185メートル
城山遺跡（芦屋市）：標高250メートル
貝殻山遺跡（岡山市）：標高284メートル
高尾山遺跡（柏原市）：標高280メートル
山元遺跡（新潟県村上市）：高地性環濠集落
古曽部・芝谷遺跡（大阪府高槻市）：高地性環濠集落

これらの遺跡は、当時の人々の生活や、社会情勢を知る上で貴重な手がかりとなります。

まとめ

高地性集落は、弥生時代の社会を理解する上で重要な遺跡です。軍事的な役割だけでなく、人々の生活や、平地集落との関係性など、様々な側面から考察することで、当時の社会情勢をより深く理解することができます。

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