高島善哉

高島善哉：マルクスとスミスを繋いだ経済学者

高島善哉（1904-1990）は、20世紀日本の社会科学に多大なる影響を与えた経済学者にして社会学者です。マルクス主義とアダム・スミス研究を専門とし、一橋大学名誉教授、関東学院大学名誉教授の称号を持ちます。岐阜県出身で、旧制岐阜中学校首席卒業という輝かしい経歴を持ち、東京商科大学（現一橋大学）を卒業後、母校に助教授として着任しました。

学問への道と社会運動

大学時代は当初、福田徳三ゼミナールに所属していましたが、福田の留学後、大塚金之助の指導を受けました。卒業論文ではシュンペーターを研究課題としましたが、その後の研究生活においてはマルクス主義とアダム・スミスへの関心を深めていきます。大塚の推薦により東京商科大学助教授に就任すると同時に、大塚が所長を務める東京社会科学研究所の研究員も兼任。杉本栄一らと共に研究活動に没頭しました。しかし1929年には補手に降格という苦い経験も味わっています。

1933年には、師である大塚金之助や同僚の杉本栄一が逮捕される事件に巻き込まれ、自身もマルクスの著作翻訳や共産党機関紙購読を理由に一時拘留されるなど、激動の時代を生き抜きました。この経験は、高島善哉の思想形成に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。

戦後の活躍と指導者としての側面

戦後、東京商科大学教授、予科教授を経て予科長に就任。その後、一橋大学法学社会学部社会学科長、社会学部長を歴任しました。1968年に一橋大学を定年退官後も、関東学院大学教授として教壇に立ち続け、1981年に退任しました。

高島善哉の指導を受けた学生は、経済学、社会学、政治学など幅広い分野で活躍する著名な学者や実業家、ジャーナリストを輩出しました。その中には、長洲一二（元神奈川県知事）、水田洋（日本学士院会員）、古賀英三郎、山田秀雄など、多くの碩学が名を連ねます。経済学史家の高島光郎は、彼の息子にあたります。

著作活動と多様な研究テーマ

高島善哉の著作は、アダム・スミスの研究からマルクス主義批判、現代社会問題まで多岐にわたります。代表的な著書として、『経済社会学の根本問題』『アダム・スミスの市民社会体系』『社会科学と人間革命』『現代日本の考察』などがあります。これらの著作は、戦後の日本の社会科学研究に大きな足跡を残し、今日でも高い評価を受けています。また、数多くの翻訳にも携わっており、西洋の社会科学思想の日本への紹介にも貢献しました。

高島善哉は、単なる学問研究者ではありませんでした。激動の時代を生き抜き、常に社会と向き合い、自らの知見を社会に還元しようとした実践的な知性の人でした。彼の生涯と業績は、現代社会を考える上で貴重な示唆を与えてくれます。その思想は、単なる学術的な枠を超え、現代日本の社会構造や思想の形成に大きな影響を与えたと言えるでしょう。彼の著作を読み解くことは、現代日本社会を理解する上で非常に重要な作業と言えます。彼の功績は、今後も日本の社会科学研究に影響を与え続けるでしょう。

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