水田洋

水田 洋の生涯と業績

水田洋（みずた ひろし、1919年9月3日 - 2023年2月3日）は、日本を代表する経済学者および社会思想史学者であり、市民運動家としても知られる存在です。名古屋大学の名誉教授として多くの学生に教えを広め、特にアダム・スミスの研究においては世界的な権威を誇っています。また、彼の功績を称え名古屋大学では「水田賞」が設けられ、未来の研究者を応援する取り組みを行っています。

学歴と初期のキャリア

水田は東京市（現在の東京都港区）に生まれ、青南小学校を経て、東京商科大学（後の一橋大学）に進学。早熟な才能を発揮し、1941年に同大学を卒業しました。大学院では高島善哉のゼミに所属し、卒業論文として「生成期国民国家の思想史的研究」を執筆しました。

1942年には東亜研究所に入所し、戦中は大日本帝国陸軍の一員として活動。その後、捕虜生活を経て1946年に母校に戻ったものの、指導教授との険悪な関係により名古屋大学に転任することになります。1949年には名古屋大学法経学部の助教授として新たなキャリアをスタートしました。

学術的功績

水田はアダム・スミス研究の第二世代として知られ、先代の高島や大道らと共に、日本におけるアダム・スミス研究を広げました。特に彼は古典の版や書誌学に注目し、版の違いを研究することに力を注いだことで知られています。翻訳においても優れた業績があり、『道徳感情論』や『国富論』などの翻訳が特に評価されています。

また、1960年には学位論文「近代人の形成」で京都大学から経済学博士の称号を受けました。名古屋大学では経済学部の教授、経済学部長を歴任し、さらには経済学史学会や社会思想史学会の代表幹事にも就任。これらのポジションから、学術界に多大な影響を与えました。

市民運動への関与

水田は学問の枠を超え、市民運動に積極的に関わりました。名古屋市民の会の代表として情報公開を求める活動を行い、また「不戦へのネットワーク」の共同代表など、平和を求める運動に参加。他にも名古屋オリンピック招致反対運動や愛知万博反対運動にも関与し、市民の権利を守るための活動を続けました。

晩年と死去

水田は103歳まで生き、2022年から入院していましたが、病院のベッドの上からも日本の社会問題について発言をしていました。2023年2月3日に名古屋市内の病院で老衰により亡くなりました。彼の死を悼む声は広がり、名古屋大学の杉山総長は「名古屋大学を代表する知の巨人」と称えました。

まとめ

水田洋は、経済学と社会思想史の分野での業績と市民運動への積極的な参加により、後世に大きな影響を与えた人物です。彼の遺した研究成果や活動は、今後も多くの研究者や市民活動家に引き継がれ、語り継がれていくことでしょう。彼の多様な業績は、経済学だけでなく社会全体に対する深い洞察を与えてくれます。

もう一度検索