高崎市歌

高崎市歌

『高崎市歌』（たかさきしか）は、群馬県高崎市が定める公式の市歌です。この歌は、高崎市が市制60周年という節目の年を迎えたことを記念し、1961年（昭和36年）に誕生しました。その制定過程は、市民が主体的に関わる形で行われたことが特徴です。

市歌を作成するにあたり、まず歌詞が全国から公募されました。寄せられた応募作品は179編にのぼり、その中から選ばれた優秀な作品を基に、著名な詩人である岡田刀水士氏が補作を加え、現在の歌詞が完成しました。次に、この歌詞にふさわしいメロディーを求める作曲部門の募集が実施されました。こちらは36編の応募作が集まりましたが、最終的に採用されたのは、当時わずか17歳で群馬県立高崎高等学校に在学中だった塚田佳男氏の作品でした。若き才能が市歌のメロディーを生み出したことは、制定当時の大きな話題となりました。採用された楽曲は、高崎市民音楽連盟の常任理事であった浜欽哉氏や阿部延氏らによって補作曲および編曲が施され、正式な市歌として完成に至りました。

完成した市歌は、1961年7月18日に開催された市制60周年記念式典の場で初めて市民に披露されました。この発表演奏は、式典に参加した多くの人々にとって印象的な出来事となりました。市歌の制定を記念し、歌詞を刻んだ歌碑が高松町にある高崎市庁舎の前に建てられており、現在も市民に親しまれています。

その後、平成時代に行われた大規模な合併により、高崎市は周辺の町村を編入しました。具体的には、群馬郡の倉渕村、箕郷町、群馬町、榛名町、そして多野郡の新町、吉井町が加わりました。この合併に際し、新しい高崎市の歌をどのように扱うかが議論されましたが、合併後の市歌については高崎市の既存の制度に統一されることが定められました。これにより、『高崎市歌』は、合併後の広範な地域においても引き続き市の歌として歌い継がれることとなりました。

編入された旧町村の中には、それぞれ独自の歌を定めている地域もありました。例えば、群馬町と榛名町は「町歌」を、新町と吉井町は「町民愛唱歌」を制定していました。また、その他の地域でも音頭や小唄などが住民に親しまれていました。これらの地域固有の歌についても、合併協議の中で議論が行われ、住民からの要望がある場合には「地域の歌」として存続を認めるという取り決めがなされました。これは、高崎市歌を市の公式な歌としつつも、各地域の文化や歴史を尊重し、多様な歌を大切にしようという方針を示すものです。

このように、『高崎市歌』は、市の節目に市民参加によって生み出され、歌碑の存在や、旧町村の歌も尊重されるといった背景を持ちながら、現在の高崎市においても市民のアイデンティティや誇りを象徴する歌として歌い継がれています。

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