高嶋伸欣

高嶋伸欣（たかしま のぶよし）

プロフィール

1942年、東京に生まれる。地理学者、歴史研究家として知られ、琉球大学名誉教授の肩書きを持つ。東京教育大学（現筑波大学）で地理学を専攻し、家永三郎らに師事した。教育者としてのキャリアも長く、筑波大学附属高等学校で社会科教員を務めた。

研究活動と社会運動

高嶋は、日本の近現代史、特に東南アジアにおける日本の戦争責任に関する研究に力を注いだ。教員時代には、日本教職員組合の組合員教師を対象とした「マレー半島戦争追体験の旅」を主宰し、マレーシアにおける日本軍の住民弾圧に関する証言を集めた。これらの活動は、高嶋の歴史認識の形成に大きな影響を与え、後の教科書問題に関する活動へと繋がっていく。

教科書問題への取り組み

高嶋は、教科書の内容に関する検定に異議を唱え、10年以上に及ぶ教科書裁判を戦った。1992年、自身が執筆した高校教科書の記述が文部省の検定で修正を求められたことをきっかけに、国を相手に訴訟を起こした。この裁判は「横浜教科書訴訟」として知られ、一審では高嶋側が勝訴したものの、二審、最高裁と覆され、最終的には高嶋の訴えは退けられた。しかし、この裁判は、教科書検定のあり方や歴史認識に関する重要な議論を喚起した。

また、高嶋は、歴史教科書採択問題にも積極的に関与し、『新しい歴史教科書』や育鵬社の教科書に対して不採択運動を展開した。教育委員会に対して、これらの教科書を採択した場合、責任を問う可能性を示唆する書簡を送るなど、強い姿勢を示した。

竹島問題に関する主張

高嶋は、竹島問題についても独自の視点から主張を行っている。彼は、1974年に文部省検定を通過した付図における竹島の記述が、当時、日本国内での関心が低かったため、目立たない程度に表示されていたと指摘。また、近年、竹島が領土問題として浮上したのは、安倍晋三を中心とする自民党が、票田のためにナショナリズムを煽るために島根県をけしかけた結果であると主張している。さらに、民主党政権下でも竹島問題が継続していることについては、「民主党自体が半分は隠れた自民党だから」と述べている。これらの主張は、既存の歴史認識や政治的見解とは異なる独自の解釈に基づいている。

主な著書

高嶋は、多数の著書を執筆しており、その多くが教科書問題、歴史認識、日本の戦争責任に関するものである。

『八〇年代の教科書問題』
『旅しよう東南アジアへ　戦争の傷跡から学ぶ』
『教育勅語と学校教育　思想統制に果した役割』
『教科書はこう書き直された！』
『ウソとホントの戦争論　ゴーマニズムをのりこえる』
『拉致問題で歪む日本の民主主義　石を投げるなら私に投げよ』

これらの著書は、高嶋の歴史観や教育観を理解する上で重要な資料となる。

平和運動への参加

高嶋は、平和運動にも積極的に参加している。「平和のための戦争展」の呼びかけ人を務めるなど、戦争の悲惨さを伝え、平和を希求する活動を続けている。

まとめ

高嶋伸欣は、地理学者、歴史研究家として、教育者として、また社会運動家として、多岐にわたる分野で活躍した人物である。特に、教科書問題や日本の戦争責任に関する活動は、日本の歴史認識や教育のあり方に大きな影響を与えた。その主張は賛否両論あるものの、日本の近現代史を考える上で、重要な視点を提供していると言える。

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