高斎正

高齋 正：自動車レースとSFを駆け抜けた作家

高齋正（こうさいただし、1938年12月21日-）は、日本の作家、自動車評論家である。群馬県前橋市に生まれ、のちにSF作家として知られる豊田有恒氏とは幼少期からの同級生であった。群馬県立前橋高等学校、慶應義塾大学経済学部卒業という経歴を持つ。

高齋氏の作品は、自動車レースを題材にした小説が多くを占める。特に、未来を予見したかのような描写で知られる「未来予測小説」は、当時のカーレースファンから高い評価を得ている。代表作として挙げられるのは、『お気に入りがルマンに優勝する時』(1991年刊)である。この作品は、マツダの4ローター新型車がル・マン24時間レースで日本車初の優勝を果たす様子を描写しており、同年のマツダ787Bのル・マン優勝を予言したとされている。他にも、『ホンダがレースに復帰する時』や『ランサーがモンテを目指す時』といった作品も、類まれな予見性で高い評価を得ている。

高齋氏は、自動車レース小説の分野だけでなく、SF小説の分野でも活躍した。日本SF作家クラブでは、星新一氏が初代会長を務めた際の第3代事務局長を務め、クラブの発展に貢献した。2013年には、ベテラン作家らとともに日本SF作家クラブの名誉会員に選ばれている。

高齋氏の私生活にも興味深いエピソードがある。星新一氏を仲人に依頼した結婚式では、「13日の金曜日」「仏滅」という、あえて不吉な日を選んで挙式を行ったという逸話が残っている。星新一氏による人物評では、「周到かつ細心で運営の才能がある」「ものごとのけじめをきちんとつける」「多趣味」「偏食だが神経質ではない」「執筆もマイペース」といった特徴が挙げられている。作家森雅裕氏は、著書の中で、出版界の人間関係を断絶した中で高齋氏だけは交際を続けてくれたと記している。これは、高齋氏の誠実で人望のある人となりを知る上で重要な証言と言えるだろう。

多彩な著作

高齋氏の著作は、小説だけでなく、ノンフィクション、翻訳なども含め多岐にわたる。自動車レースをテーマにした小説はもちろん、SF小説、飛行船を題材にした作品、自動車業界の内情を鋭く描いたノンフィクションなど、その作品群は幅広い読者の関心を集めている。主な著書としては下記が挙げられる。

小説

ムーン・バギー
クラシックカーを捜せ
ホンダがレースに復帰する時
ロータリーがインディーに吼える時
愛車のキー
超飛行船PZ-1翔ぶ
ニッサンがルマンを制覇する時
驀走 外車十二景
異星のルマン
ランサーがモンテを目指す時
透け透けカメラ
幻走 サーキットに燃える
トヨタが北米を席捲する時
アンデスの疾走
早春のライダー
ドキュメントルマン1955
宇宙の牢獄
UFOカメラ
レオーネが荒野を駆ける時
恋は飛行船に乗って
燃えるサーキット
カリブの天使
お気に入りがルマンに優勝する時
ネクラ人の歌
小説ジャパン・カー・オブ・ザ・イヤー
博士のレーシングカー
パリー北京ラリーの華
激走のサーキット F3000篇
ミレミリアが復活する時
ルマン閃光の青い花
快走!N1ストーリー
F1のチャンピオン
国産コンプリートカー、F1挑戦!
インターTECストーリー
レーシングカー・技術の実験室
国産グランプリカー、F1参戦!
国産F1マシーン、大変身!
GTレース優勝大作戦
馬なし馬車による走行会
サーキットを疾走れ!!
タルガ・フローリオが復活する時
モータースポーツクイズ50問
疾風ドライバー
激走!
モータースポーツミセラニー
クラシックカメラ十二カ月
パリ～ボルドー1895
ロンドン～ブライトン1896

ノンフィクション、その他

欠陥・自動車業界
パリ～ウィーンドライブ紀行
パリ～ウィーン1902
モータースポーツの楽しみ
* ここまで堕ちた自動車業界

翻訳

高齋氏は、数多くの自動車関連書籍の翻訳にも携わっている。その中には、著名なレーシングドライバーの自伝や、自動車の歴史を扱った書籍が含まれる。

高齋正氏の作品群は、自動車レースへの情熱、SFへの造詣の深さ、そして人間味あふれる筆致によって彩られている。彼の作品を読み解くことは、日本のモータースポーツ史やSF文学史を深く理解することに繋がるだろう。

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