高柳又四郎

高柳又四郎について

高柳又四郎（たかやなぎ またしろう）は、江戸時代後期の剣客であり、名声を博した剣術の使い手です。生年は1808年、彼の本名は利辰または義正とされています。また、彼は「音無しの剣」と称される独特の剣術スタイルで知られています。これにより、又四郎は武道の世界で特異な存在となりました。彼の子孫は熊本の渡邉一族に連なっています。

経歴

又四郎は飛騨郡代を務めた高柳左京亮定用の次男であり、剣豪の家系で育まれました。高柳家は戸田流剣術を伝承しており、先祖の高柳源五右衛門定政からこの流派を受け継いでいました。又四郎の祖父は、他の流派も学び、自ら「高柳派」を興しましたが、それは一代限りで終わり、戸田流に戻ることになりました。彼の父・定用がその約束を破り、「高柳派」の2代目を名乗ったことからも、剣術家の家系特有の葛藤と欲望が伺えます。

文政2年（1819年）、又四郎が12歳の頃、父は飛騨郡代として赴任しました。この頃、盗賊が飛騨地区を荒らしており、武士としての誇りから又四郎はこの盗賊を追うことを決意しました。4年後の文政6年（1823年）、仙台で医者であり剣の達人でもある藤木道満に出会い、小太刀の技術を学びました。その後、江戸に出て、中西道場に入門し、剣術への道をさらに深めていきました。

戦略とスタイル

又四郎が「音無しの剣」と称される理由は、彼の剣術スタイルにあります。相手の剣で打ち込まれるのを一切音を立てずにかわすことからこの名がついたのです。彼の静かな戦いぶりは、後の文学や剣術の作品に多くの影響を与えました。中里介山の『大菩薩峠』に出てくる机竜之介の「音無しの構え」は、彼からインスピレーションを得たとされます。

又四郎は、自らの剣術を商売にする考えを持たず、修行と教えを重視する性格でした。彼の人柄は非常に無欲であったと伝えられていますが、その晩年の生活については情報が乏しく、詳細は不明です。

有名なエピソード

千葉周作との立ち会いが特に有名です。千葉はまだ若く、技術も未熟でしたが、彼は勢い余って道場の床を壊してしまったとされています。このエピソードは、当時の武道界の礼儀や力関係を示す一例です。また、筑後柳河藩の大石進との戦いでは、竹刀の使用についての哲学的な対話が交わされ、又四郎は彼の剣の音が負けを証明したと認める無私な態度が印象的でした。

文化への影響

高柳又四郎に関する作品は多岐にわたります。小説や漫画、映画などが存在し、彼の生涯や偉業は今も人々に語り継がれています。例には、村上元三の『高柳又四郎』や戸部新十郎の『音無』、さらに横山光輝による漫画『音無しの剣』などがあります。一連の作品は、彼の伝説を現代にも生き続けさせています。

高柳又四郎は、剣術の技術だけでなく、彼の人間性や生きざまにおいても多くの人たちに影響を与え続けています。

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