高根鉱

高根鉱：日本の鉱物学に貢献した高根勝利博士にちなんだ希少鉱物

高根鉱（たかねこう、Takanelite）は、1971年に日本で発見された比較的新しい鉱物です。東北大学の鉱物学者、南部松夫氏と谷田勝俊氏によって、愛媛県にある野村マンガン鉱山で発見されました。この鉱物の命名は、東北大学でX線結晶学に多大な貢献をした高根勝利博士（1899-1945）への敬意を表したものです。

高根鉱の性質

高根鉱の化学組成は(Mn,Ca)Mn4O9・H2Oと表され、六方晶系に属します。灰色から黒色を呈し、鈍い光沢を持つ結晶集合体として産出されます。モース硬度は5、比重は3.41と測定されています。

高根鉱は、バーネス鉱グループに分類されます。このグループに属するランシー鉱と化学組成が類似しており、ランシー鉱中のカルシウムイオンが二価マンガンイオンに置換されたものと考えることができます。

しかし、高根鉱は、クリプトメレン鉱、軟マンガン鉱、エンスート鉱、バーネス鉱、轟石など、他のマンガン酸化鉱物と常に共存しており、肉眼での判別は困難です。これらの鉱物が不純物として混入しているため、高根鉱の正確な化学組成や結晶構造は、未だ完全に解明されているとは言えません。今後の研究による更なる知見の蓄積が期待されます。

産出地と発見

高根鉱は、最初に愛媛県野村マンガン鉱山で発見された後、群馬県伊香保温泉の温泉沈殿物中からも発見されています。異なる地質環境下で産出されるという事実は、高根鉱の生成条件に関する興味深い情報を提供しています。愛媛県での発見はマンガン鉱床という特殊な環境、一方伊香保温泉での発見は熱水作用という別の地質学的プロセスを示唆しており、高根鉱の形成メカニズム解明には、これらの産地の地質学的特性の比較検討が重要になります。

高根鉱の研究と今後の展望

高根鉱は、発見から半世紀以上が経過していますが、その希少性と複雑な産状から、いまだ多くの謎が残されています。正確な結晶構造や生成メカニズムの解明は、今後の研究課題です。最新の分析技術を用いた研究により、高根鉱の性質や成因に関するより詳細な情報が得られることが期待されます。また、高根鉱の発見は、日本の鉱物学の発展に大きく貢献した高根勝利博士の業績を後世に伝える上で重要な役割を果たしています。

まとめ

高根鉱は、その希少性、複雑な産状、そして高根勝利博士へのオマージュという歴史的背景から、日本の鉱物学において重要な鉱物の一つと言えるでしょう。今後の研究によって、高根鉱に関する理解がさらに深まることが期待されます。

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