高橋博之
高橋博之
高橋 博之（たかはし ひろゆき）氏は、1974年（昭和49年）7月31日生まれの日本の実業家です。現在は株式会社雨風太陽の代表取締役を務めています。
経歴
高橋氏は、実業家としての活動を始める前に政治の世界に身を置いていました。2006年（平成18年）には、岩手県議会議員の補欠選挙に無所属で立候補し、当選を果たして県政に携わりました。しかし、2011年（平成23年）9月に行われた岩手県知事選挙では、大規模な防潮堤建設の方針に異議を唱え、立候補を決断します。残念ながら次点での落選となり、この選挙を機に政界から引退することを決めました。
政治家としての道を終えた後、高橋氏は新たな活動を開始します。2013年（平成25年）、彼は「世の中を良くするためには、まず食のあり方を見直すことが必要だ」という「世なおしは、食なおし。」の理念を掲げ、NPO法人東北開墾を設立しました。この団体を通じて、彼は世界初の試みとなる「食べ物付き情報誌」である「東北食べる通信」を創刊し、自身が編集長を務めることになります。この情報誌は、単なる食材の紹介にとどまらず、生産者の暮らしや哲学、その土地の文化などを深く掘り下げた内容と、彼らが丹精込めて作った旬の食材をセットで届けるという斬新なスタイルで注目を集めました。その革新性が評価され、2014年（平成26年）にはグッドデザイン金賞を受賞しています。
「東北食べる通信」の成功を受けて、高橋氏はそのモデルをさらに広めることを目指しました。同年、彼は一般社団法人「日本食べる通信リーグ」を立ち上げ、全国各地の地域版「食べる通信」の創刊を支援し、そのネットワークを構築しました。この活動により、「食べる通信」は日本国内だけでなく、台湾を含む50以上の地域に展開されるまでになりました。
さらに、高橋氏はテクノロジーを活用した食の流通改革にも乗り出します。2016年（平成28年）には、農家や漁師といった生産者と消費者がスマートフォンアプリを通じて直接つながり、旬の食材を売買できるプラットフォーム「ポケットマルシェ」のサービスを開始しました。これにより、消費者は生産者の顔やこだわりを知りながら新鮮な食材を手に入れることができ、生産者は自らの適正価格で販路を確保できるという、新しい形の食のネットワークが生まれました。
これらの事業の拡大に伴い、運営体制も変更されています。2022年（令和4年）には、それまで「ポケットマルシェ」の名前で行っていた事業全体の運営会社名を、現在の「株式会社雨風太陽」へと改称し、より包括的な視点での事業展開を進めています。
高橋氏の一連の活動は、地方と都市、生産者と消費者という従来の分断を超え、食を通じて豊かな人間関係と地域社会を再構築しようとする試みとして、多くの関心を集めています。
メディア出演・著作など
高橋氏は、そのユニークな活動内容から、様々なメディアに取り上げられています。特に、テレビ東京の経済ドキュメンタリー番組「日経スペシャル カンブリア宮殿」には、2019年と2022年の二度にわたり出演し、彼の事業と思想が紹介されました。
また、自らの経験や哲学をまとめた書籍も複数出版しています。主な著書としては、『だから、ぼくは農家をスターにする 「食べる通信」の挑戦』、『都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡』などがあり、食や地域、新しい経済のあり方について論じています。さらに、『人口減少社会の未来学』や『共感資本社会を生きる』といった共著にも参加し、幅広いテーマで自身の考えを発信しています。自身が監修した書籍『人と食材と東北と』もあります。
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