高橋政代

高橋政代

高橋政代（1961年6月23日生まれ）は、日本の著名な医学者・眼科医であり、特に網膜再生医療の研究開発において先駆的な業績を上げています。京都大学で医学博士号を取得後、理化学研究所多細胞システム形成研究センターでプロジェクトリーダーを務めました。現在は、スタートアップ企業「ビジョンケア」の社長として、研究開発を続けています。

研究者としての道のり

大阪府で生まれ育った高橋氏は、幼少期からキュリー夫人に憧れ、科学者を目指していました。親の勧めで京都大学医学部に進学し、眼科医としてのキャリアをスタートさせます。大学時代はテニスに熱中する一方、将来を見据えて家庭と研究の両立がしやすい眼科を選びました。1986年に京都大学医学部を卒業後、眼科医として臨床経験を積み、1992年に医学博士号を取得しました。

1995年、夫の留学に伴いアメリカへ渡り、ソーク研究所で神経幹細胞に出会います。当時、治療が困難だった網膜疾患の患者を多く診てきた高橋氏は、神経幹細胞から網膜を再生できる可能性を感じ、研究に没頭することを決意します。帰国後も京都大学で臨床医として働きながら研究を続け、2000年頃にはES細胞に着目し、理化学研究所の笹井芳樹氏との共同研究で、世界で初めてヒトES細胞から神経網膜を分化誘導することに成功しました。

iPS細胞研究と臨床応用

ES細胞研究が進む一方で、倫理的な問題から臨床応用へのハードルは高く、山中伸弥博士がiPS細胞の開発に成功したことで、状況は一変します。iPS細胞は倫理的な問題が少なく、患者自身の細胞から作製できるため拒絶反応のリスクも低いという利点がありました。高橋氏は、iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞を移植する臨床研究を計画し、2013年に世界初となるiPS細胞を用いた加齢黄斑変性治療の臨床試験実施の承認を得ます。2014年には、患者自身のiPS細胞から作製した網膜色素上皮細胞を移植する手術に成功し、再生医療の分野に大きな希望をもたらしました。

しかし、臨床研究を進める中で、理化学研究所でSTAP細胞に関する研究不正問題が発生し、高橋氏自身も研究倫理について深く考えることになります。一時、臨床研究の中止も検討しましたが、患者への責任を果たすため、安全性を最優先に研究を継続することを決意しました。その後も、他人由来iPS細胞を用いた臨床試験を実施し、安全性と有効性を確認するなど、着実に成果を上げています。

現在と未来への展望

2019年に理化学研究所を退職後、高橋氏は「ビジョンケア」を設立し、iPS細胞技術を応用した網膜再生医療の実用化に向けて尽力しています。2024年には、他社が保有する特許の使用について、経済産業大臣に通常実施権の裁定を求めるという異例の事態も経験しましたが、最終的には和解が成立し、研究開発を継続できる道が開かれました。

高橋政代の研究は、再生医療の分野に革新をもたらし、多くの患者に希望を与えています。彼女のたゆまぬ努力と挑戦は、今後ますます発展していくことが期待されます。

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