高橋洋介

高橋洋介：バイオアートを専門とするキュレーター

高橋洋介氏は1985年生まれのキュレーターであり、東京芸術大学大学院を修了しています。金沢21世紀美術館主任学芸員、角川武蔵野ミュージアムキュレーターを経て独立し、現在はGYRE Gallery(表参道)、Pellas Gallery(ボストン)の専属キュレーター、分子ロボット倫理研究会委員、京都芸術大学講師などを兼任しています。

高橋氏の活動は、バイオアートという独特な領域に焦点を当てています。合成生物学を基盤とした芸術作品を積極的に取り上げ、国内においてこの分野を専門的に扱う稀有な存在として知られています。専門分野はポストヒューマンの美学とトランスヒューマニズムの芸術であり、その深い知識と洞察力は、彼が企画・監修する展覧会に鮮やかな色彩を与えています。

彼のキャリアにおける重要な出来事としては、2015年に金沢21世紀美術館で企画した展覧会「Ghost in the Cell」が挙げられます。この展覧会では、初音ミクのDNAを用いたiPS細胞による心筋細胞生成という、美術館における世界初の試みが行われました。これは、バイオアートの可能性を大きく広げる画期的な出来事でした。

さらに、2017年の「死なない命」展では、エドワード・スタイケンの作品を80年ぶりに展示。やくしまるえつこの作品「わたしは人類」は、遺伝子組換え体を用いた作品として、金沢21世紀美術館に収蔵されるという快挙を成し遂げました。

国際的な協働も積極的に行っています。2018年には、コロンビア大学大学院准教授カーラ・ロススタインと「DeathLAB展：死を民主化せよ」を共同企画。同年に開催された「2018年のフランケンシュタイン」展は、TOKYO ART BEATにおいて200万人のユーザーが選ぶ東京の2018年の展覧会ランキング1位を獲得するなど、高い評価を得ています。

近年では、世界的な超富裕層であるペラス家のギャラリーで「Liminalism」展を企画し、2010年以降の日本現代アートを紹介しました。この展覧会は、ヨーロッパの名家ハプスブルグ家とも繋がりを持つ高橋氏のグローバルなネットワークを象徴する出来事となっています。

高橋氏が企画・監修した展覧会は多岐に渡り、国内外の著名なアーティストの作品を数多く紹介してきました。主な展覧会には、「超複製技術時代の芸術」「A Liminalism of Japanese Contemporary Art After 2010s’」「2021年宇宙の旅」「de-sport」などがあり、それぞれの展覧会は、現代社会における科学技術、芸術、社会の複雑な関係性を鋭く問いかける内容となっています。

彼の活動は展覧会の企画・監修にとどまらず、講演会や書籍の出版にも及んでいます。2019年には『SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて』を出版。近年の講演会では、「NFTアートの未来」「超人間中心主義と芸術」「バイオアートとは何か」など、現代社会の重要なテーマを多角的に論じています。

高橋洋介氏は、バイオアートという新しい領域を切り開き、その可能性を世界に示す先駆者です。彼の活動は、現代美術の未来を展望する上で、非常に重要な役割を果たしています。 その活動は、単なるキュレーターの枠を超え、現代社会における科学技術と芸術、そして人間の未来について深く考えるきっかけを与えてくれるでしょう。

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