高橋良平

高橋良平：日本の石炭地質学をリードした先駆者

高橋良平博士（1923年8月10日-1997年6月15日）は、日本の地球科学界、特に石炭地質学分野において卓越した業績を残した著名な研究者です。福岡県太宰府市に生まれ、旧制福岡県立福岡中学校を経て、1946年に九州帝国大学理学部地質学科を卒業しました。

卒業後、麻生鉱業株式会社に入社。その後、1952年に九州大学理学部地質学教室石炭地質学講座に講師として着任、翌年には助教授に昇任し、松下久道教授の下で教育と研究に貢献しました。1960年には九州大学より理学博士号を取得し、「北九州炭田における石炭化作用と地質構造の関係」に関する論文で学位論文を認められました。

1972年には、九州大学理学部地質学教室石炭地質学講座の教授に就任。その後、1980年から1982年にかけては九州大学理学部長、1986年から1991年にかけては九州大学第18代学長を務め、大学運営にも大きく貢献しました。特に、1991年には箱崎と六本松の両キャンパスを福岡市西区元岡（伊都キャンパス）へ統合するという、大学にとって大きな転換期となる決断を下したことは特筆に値します。

学長退任後も、その活躍は留まることを知りませんでした。燃料協会理事、九州フンボルト会会長、西日本日独協会副会長など、要職を歴任。1992年から1996年には大学入試センター所長、さらに1996年には福岡市総合図書館長および九州歴史資料館長にも就任するなど、その活動は多岐に渡りました。

高橋博士の研究業績は、日本の石炭地質学研究の発展に多大な影響を与えました。初期の研究では、九州各地の炭田地質や国内各地の夾炭古第三系の層序、地質構造の解明に力を注ぎ、重要な学術的貢献を果たしました。1956年から1958年、そして1975年には西ドイツ（当時）のボン大学や州立地質調査所で研究を行い、石炭組織の反射顕微鏡による基礎的研究手法を習得。この高度な技術を日本に初めて導入し、日本の石炭地質学研究の新たな地平を切り開きました。

晩年は、炭田の堆積史、構造発達史、変成史を解明することを目指し、石炭化度の研究に専念。さらに蛍光顕微鏡学的手法を用いて、石炭と石油の熟成変化の研究方法開発にも取り組みました。これらの研究を通して、日本のエネルギー資源開発に貢献しました。

多くの編著書にも携わっており、『日本地方鉱床誌』、『石炭資源とその利用技術』、『石炭資源開発・液化技術総合資料集』、『石炭利用技術用語辞典』など、後進の育成にも貢献しています。

1997年6月15日に逝去。正三位に叙せられ、勲一等瑞宝章が授与されました。その功績は、日本の地球科学界に長く記憶されるでしょう。高橋良平博士は、研究者として、教育者として、そして行政官としても、日本の科学技術の発展に多大な貢献を果たした、真に偉大な人物でした。彼の残した業績は、未来の研究者たちにとって、常に学び、そして敬意を表すべき重要な指針となるでしょう。

もう一度検索