高機動車

高機動車（こうきどうしゃ）

高機動車は陸上自衛隊が導入した多用途の人員輸送車両です。正式には「ハイ・モビリティ・ビークル」と呼ばれ、防衛省の広報活動においては「疾風（はやて）」の愛称がつけられています。部隊内では「高機（コウキ）」の略称が一般的です。独自の性能を持つこの車両は、アメリカのハンヴィーに似た特徴から、かつては「ジャンビー」や「ジャパニーズハマー」とも呼ばれました。

概要

高機動車は1990年代初頭から陸上自衛隊に供給され始めた人員輸送車両で、その開発と納入はトヨタ自動車が担い、製造は日野自動車が行っています。その特性から自衛隊専用に設計され、市販はされていません。しかし、劇用車として民間企業が利用する例も存在します。さらに、高機動車をベースにした民生用バージョンであるメガクルーザーが市販されており、さまざまな団体が災害対策用として利用しています。

陸上自衛隊では小銃小隊の輸送や火砲、トレーラーの牽引など、広範な任務に対応するために使用されています。特に九州や本州の部隊ではETC機器が装備され、高速道路での運用も進められています。

開発経緯

高機動車の開発は1993年から始まり、初期の段階では主に実験部隊での利用が行われました。1994年以降、部隊運用実験が進められ、全国の普通科連隊への配備が1995年から始まりました。2010年に至るまで、全国の普通科連隊への配備が完了し、現在も新たな車両が調達されています。

特徴

この車両は人員や物資の運搬に特化しており、一般的なトラックとマイクロバスの両方の機能を兼ね備えています。非装甲設計ですが、その堅牢さには定評があります。また、エンジンは特注の型式を使用しており、運転性能は優れています。特にサスペンションにおいては、油圧式操作を採用し、高速走行時でも安定性を保つことができるよう設計されています。

派生型

高機動車から派生した車両も多く存在し、120mm迫撃砲を牽引するための「重迫牽引車」や、国際任務仕様に変更された改良型もあります。これらの派生型は、特定の任務要件や状況に応じて設計されており、戦場での実用性を高めています。

運用国

高機動車は主に日本国内で使用されるが、ウクライナへの提供も行われています。2023年には自衛隊からウクライナに向けて100台規模の車両が支援されました。一方、ロシアも類似の車両を使用しており、さまざまな国での運用状況が注目されています。

このように、高機動車はその多機能性と堅牢さから、防衛活動において欠かせない存在となっています。

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