高田宏

高田宏：編集者から文筆家へ、多彩な人生を彩る言葉と自然

高田宏（1932年8月24日-2015年11月24日）は、日本の編集者、作家、随筆家として知られています。京都市生まれ、石川県加賀市で育ち、京都大学文学部仏文学科を卒業。光文社、アジア経済研究所、エッソ・スタンダード石油（現ENEOS）など、様々な分野で編集者としてのキャリアを積みました。

編集者としてのキャリアと『エナジー』

光文社では『少女』や『マイホーム』の編集に携わり、アジア経済研究所では『アジア経済』の編集長を務めました。1963年、エッソ・スタンダード石油に入社。1964年には、PR誌『エナジー』を創刊し、11年間編集長を務めました。単なる企業広報誌にとどまらず、小松左京や梅棹忠夫といった著名な文化人からの寄稿を積極的に掲載。一冊一特集主義を貫き、高い評価を獲得しました。『エナジー』で培った編集者としての経験は、後の文筆活動にも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

石油危機による『エナジー』廃刊後も、『エナジー対話』（1975-1982年）や『エナジー小事典』（1983年）などの編集にも携わりました。1983年にエッソを退社し、文筆家としての道を歩み始めます。

文筆家としての活動：自然と日本の伝統文化への深い関心

高田宏は、約100冊に及ぶ著作を残しました。代表作である『言葉の海へ』は大槻文彦の評伝であり、大佛次郎賞と亀井勝一郎賞を受賞。その後も歴史小説『島焼け』『雪　古九谷』、自然をテーマにした随筆、児童文学、日本の伝統文化を紹介する紀行文・評論など、幅広い分野で執筆活動を続けました。

彼の作品には、樹木、森、島、旅、雪、猫など、多様なテーマが登場します。自然への深い愛情、日本の伝統文化への造詣の深さが、作品全体に息づいています。単なる知識の羅列ではなく、自身の経験や考察に基づいた、深く情感豊かな文章が特徴です。

文化活動への貢献

文筆活動以外にも、日本ペンクラブ理事、石川県九谷焼美術館館長、深田久弥山の文化館館長、将棋ペンクラブ会長などを歴任。将棋ペンクラブ大賞の選考委員も務めるなど、文化活動にも積極的に貢献しました。小諸・藤村文学賞、ゆきのまち幻想文学賞の審査員も務めています。

受賞歴

1978年：『言葉の海へ』で大佛次郎賞、亀井勝一郎賞受賞
1990年：『木に会う』で読売文学賞受賞
1995年：雪国文化賞受賞
1996年：旅の文化賞受賞

家族

長男は将棋棋士の高田尚平氏、次男はイラストレーターの高田雄太氏です。

晩年と死

晩年も精力的に執筆活動を行い続けましたが、2015年11月24日、肺がんのため83歳で逝去しました。

高田宏が残した著作は、自然の美しさ、日本の伝統文化の奥深さ、そして言葉の力強さを、私たちに伝えてくれます。彼の多様な才能と、社会への貢献は、長く記憶されるでしょう。

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