高畠通敏

高畠通敏（たかばたけ みちとし）

高畠通敏は、1933年11月16日に生まれ、2004年7月7日に逝去した日本の政治学者です。計量政治学の研究で知られ、立教大学の名誉教授を務めました。彼の生涯は、学問と社会運動の両面で、日本の政治思想に大きな影響を与えました。

生涯と学歴

東京都で生まれた高畠は、戦時中に長野県へ疎開しました。長野県立上田松尾高等学校を経て、東京都立日比谷高等学校を卒業。1956年には東京大学法学部を卒業し、同大学の助手となりました。その後、立教大学に移り、助教授、教授として教鞭を執りました。1965年にはイェール大学へ留学し、1999年に立教大学を定年退職するまで、長きにわたり教育に携わりました。

学問的業績

高畠は、政治学における計量分析の導入に尽力し、京極純一と共に、日本人の政治行動を客観的に分析する手法を確立しました。彼の研究は、それまでの政治学研究に新たな視点をもたらしました。著書には、『政治の論理と市民』、『政治学への道案内』などがあり、政治学の基礎理論から現代政治の分析まで、幅広い分野で研究成果を残しました。

社会運動への関与

高畠は、学問だけでなく、社会運動にも積極的に参加しました。1960年の安保闘争では、「声なき声の会」の事務局長として活動し、1960年代後半にはベトナム戦争に反対する市民運動を組織しました。彼は、「市民のための政治学」を提唱し、市民が主体的に政治に関わることの重要性を訴えました。

天皇制と昭和天皇観

高畠は、天皇制についても独自の視点を持っていました。昭和天皇については、その平和主義的な側面を評価しつつ、戦争責任問題についても多角的に考察しました。彼は、昭和天皇を立憲主義者と捉え、大日本帝国の栄光の使命感が戦争を招いたと指摘しました。また、明仁天皇（当時皇太子）については、その開かれた姿勢を評価しました。

平和部隊選抜徴兵制度の提案

晩年には、若年層を対象とした平和部隊選抜徴兵制度を提唱しました。彼は、若者が軍隊に徴兵される代わりに、発展途上国への派遣や国際ボランティア活動に従事することを提案し、日本が平和主義を体現する国として国際社会に貢献すべきだと訴えました。

思想的背景と批判

高畠の思想的背景には、戦後の民主主義と平和主義があります。彼は、マルクス主義の影響を受けつつも、現実的な政治分析を重視しました。彼の言説は、時に保守的と見なされることもあり、天皇制に対する姿勢や平和部隊の提案は批判を浴びることもありました。特に、晩年の天皇制に対する見解は、以前の彼の主張との変化が見られたため、批判の対象となることもありました。

西義之との論争

中国文化大革命に関する論争では、西義之の論文を批判し、論争を繰り広げました。この論争は、知識人の責任問題やイデオロギー対立を浮き彫りにしました。

著書と論文

高畠は、数多くの著書や論文を発表しました。主な著書には『生活者の政治学』、『現代における政治と人間』、『平和研究講義』などがあります。これらの著作は、政治学の研究者や学生にとって重要な資料となっています。

家族

父親の高畠春二は弁護士で、左翼運動にも関わっていました。高畠春二の養母である高畠トクは、ニール・ゴードン・マンローの二番目の妻でした。高畠家は、複雑な家族構成を持っていたことがわかります。

まとめ

高畠通敏は、計量政治学のパイオニアとしてだけでなく、社会運動家、思想家としても重要な役割を果たしました。彼の業績は、日本の政治学の発展に大きな影響を与えただけでなく、現代社会の課題を考える上で重要な示唆を与えてくれます。彼の思想と行動は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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