高良武久

高良武久は、1899年に鹿児島県で生まれ、1996年に生涯を閉じた日本の医学者、精神科医です。彼は、性格学と森田療法を専門とし、特に神経症の治療において重要な貢献をしました。

生い立ちと医学への道

高良武久は、旧制鹿児島県立川辺中学校、旧制第七高等学校造士館を経て、1924年に九州帝国大学医学部を卒業しました。その後、同大学の精神神経科講師を務め、1929年には東京慈恵会医科大学に転任しました。この転任が、彼の人生における大きな転換点となります。彼は、東京根岸病院で森田正馬に師事し、森田療法を深く学ぶことになります。

森田療法との出会いと継承

森田正馬は、神経症治療における画期的な手法である森田療法を提唱した人物です。高良は、森田の指導の下で、この治療法を実践的に学び、その理論と技術を深く理解しました。1937年には、森田の後を継いで東京慈恵会医科大学の教授となり、森田療法の普及と発展に尽力します。

高良興生院の設立と神経症治療

1940年、高良は入院森田療法の施設である高良興生院を設立しました。ここでは、森田療法に基づいた神経症の治療が行われ、多くの患者が回復へと向かいました。高良は、患者の個々の状態を丁寧に観察し、その人に合った治療を施すことに力を注ぎました。

学術的な貢献と著作活動

高良は、医学者としてだけでなく、教育者、そして著述家としても多くの業績を残しました。1964年には東京慈恵会医科大学の名誉教授となり、その功績が称えられました。彼の著作は、専門家だけでなく、一般の人々にも広く読まれ、多くの人々に心の健康について考えるきっかけを与えました。主な著書には、『性格学』、『神経質並に神経衰弱の性格治療』、『神経質症の本態と治療』などがあります。これらの著作は、彼の性格学、森田療法における深い知識と理解を示しています。

家族と晩年

高良の家族は、彼の活動を支える大きな存在でした。父は医師であり、兄は耐火物技術研究者、妻は婦人運動家・参議院議員と、様々な分野で活躍していました。また、娘たちもそれぞれ画家、詩人として才能を発揮しました。しかし、三女は拒食症や不登校に苦しみ、18歳で自ら命を絶つという悲しい出来事もありました。高良は、1996年に亡くなり、その死後、高良興生院は閉鎖されました。彼の墓は多磨霊園にあります。

現代への影響

高良武久の業績は、現代の精神医学にも大きな影響を与えています。特に森田療法は、神経症の治療において有効な治療法として広く知られており、彼の著作は、今でも多くの人々に読まれ続けています。彼の生涯は、医学の発展に貢献しただけでなく、多くの人々に生きる勇気を与えたといえるでしょう。

参考文献

『高良武久森田療法完成への道～不安な時代に生きる知恵～』（岸見勇美著,元就出版社,2013）
Web森田療法図書館 コラム 6.高良武久の業績について（ウェイバックマシン）

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