高速いえしま

高速いえしま株式会社の概要

高速いえしま株式会社は、兵庫県姫路市家島町に拠点を置く海運会社です。この企業は、姫路港と家島を結ぶ航路を利用して、島民の通勤や通学の利便性を向上させています。従来の運航会社である家島汽船によるサービスは、1日に5往復しか運行されず、最終便も18時台に設定されていて、地元住民からは不満の声が上がっていました。このため、一部の島民は本州側に家を所有して二重生活を余儀なくされていました。

会社設立の背景

自治会は、家島汽船に増便と最終便の時間延長を求めましたが、同社は赤字を理由にそれに応じず、自治会は不満を募らせました。結果として、自治会は1億6000万円を投じて自ら船舶を購入し、1997年7月から自主運航を始めることとなりました。この新たな航路では、1日6往復が実施され、運航時間が三分の一に短縮され、最終便も20時30分に設定されました。運賃も800円で、競合の家島汽船よりも180円安いものでした。

当初、運輸省神戸海運監理部は供給過剰の懸念から定期航路の認可を出さなかったものの、自治会は年間30日以内の不定期航路として運航を強行しました。1998年には2隻目の船舶も導入され、運航は続けられ、家島汽船からの旅客を奪うことに成功しました。

新会社の設立

1999年には、運輸省が家島町と自治会の共同出資による第三セクターの設立を提案し、その結果、高速いえしま株式会社が誕生しました。同社は定期旅客航路の運航を正式に認可され、その後、家島汽船とともに各8往復の運行を行い、地域住民の通学や通勤の利便性が大幅に改善されました。結果、2000年には旅客数が38.6万人に急増し、さらに2001年には59.7万人に達するなど、急成長を遂げました。

競争とその後

2001年から2004年にかけては、高速いえしまと家島汽船、高福ライナーの3社が合計で最多24往復の運航を行うなど競争が激化しましたが、2005年に家島汽船が倒産し、運航から撤退。その結果、高速いえしまと高福ライナーの2社による運航に変わりました。

自主運航の意義

家島町はかつて国政選挙の投票率が20%から40%台という非常に低い数字を示していましたが、これは島民の独立心を示すものとも言われています。高速船の自主運航を始めた背景には「島の反骨心に火がついた」という現状があります。国は当初、その運航が実質的な違法行為であるとして運航中止を勧めたものの、島民は聞き入れず、運航を続けて成功を収めたのです。これにより、家島汽船から多数の乗客が高速いえしまに移行し、家島汽船の乗客は激減しました。

航路と船舶

高速いえしま株式会社は、姫路港・真浦港・宮港間で1日8往復を運航しています。「まうら」という船舶が就航する1往復は真浦港止まりとなっています。現在の主な船舶は、2006年に就航した高速いえしまと、1998年に就航したまうらです。過去にはしろやまという船舶も使用されていましたが、現在は日本政府によって購入され、ミャンマーに無償提供されました。

事故とインシデント

高速いえしまは運航中にいくつかの事故も経験しています。2009年には「しろやま」が警戒船と衝突する事故が発生し、また2010年には「高速いえしま」が離桟作業中に浅所に乗り揚げるインシデントも報告されています。此外、2016年には遠隔操縦装置の故障により操縦不能になったケースもありました。これらの事故は運航の安全性を問う問題として、多くの関係者によって取り上げられています。

高速いえしま株式会社は、地域住民のニーズに応える形で、今後もより良いサービス提供を目指していくでしょう。

もう一度検索