高野岩三郎

高野岩三郎：社会変革を求めた統計学者

高野岩三郎（1871年10月15日 - 1949年4月5日）は、社会統計学の先駆者であり、社会運動家としても大きな足跡を残した人物です。長崎に生まれ、兄である高野房太郎の支援を受けながら東京帝国大学を卒業後、ドイツ留学で統計学を深く学びました。

学者としての活動

帰国後、東京帝国大学で教鞭を執り、統計学の普及に努めました。社会政策学会の設立に参画し、その中で最も左派的な立場から社会問題の解決に取り組みました。また、日本文化人連盟を結成するなど、幅広い分野で活動を展開。東京帝国大学では経済学部の独立に尽力し、森戸辰男、大内兵衛、舞出長五郎など、後にマルクス経済学の分野で活躍する多くの弟子を育てました。その学術的な功績は、社会統計学の基礎を築いただけでなく、後の社会科学研究にも大きな影響を与えています。

社会運動家としての側面

高野は、単なる学者に留まらず、[社会運動]]家としても積極的に活動しました。1919年には、[[国際労働機関]代表に任命されましたが、労働界からの選出を求める声が高まり、自ら辞任。この行動は、彼の強い信念と社会正義への熱意を示すものとして注目されました。その後、大原社会問題研究所の設立に携わり、所長として労働問題の研究を推進。日本初の労働者家計調査を実施し、労働者の生活実態を明らかにしました。また、日本大衆党の委員長を務めるなど、政治活動にも関わりました。

戦後の活動と憲法草案への関与

戦後、高野は憲法研究会を設立し、憲法草案の作成に尽力しました。彼が発表した憲法私案は、[大統領制]]や土地国有化などを盛り込んだ革新的なもので、天皇制の廃止を主張するなど、その過激な主張は注目を集めました。この憲法草案は、連合国軍最高司令官総司令部]が[[日本国憲法を起草する際に参考にしたとされ、その影響は計り知れません。また、高野は初代NHK会長に就任し、民主的な放送を目指しましたが、GHQの方針転換と自身の死去により、その理想は実現しませんでした。

その他の活動

高野は、日本太平洋問題調査会の再建や日本統計学会の初代会長を務めるなど、多岐にわたる分野で活躍しました。また、日本社会党の顧問を務めるなど、政治的な影響力も持っていました。

親族

高野の妻はドイツ人女性バルバラ・カロリナであり、娘のマリアはマルクス経済学者の宇野弘蔵と結婚、三女の正子は物理学者の野上茂吉郎と結婚しました。野上茂吉郎の両親は、野上豊一郎・弥生子夫妻です。

栄典と著書

高野は、1921年に第一回国勢調査記念章を受章しています。また、『財政原論』、『統計学研究』、『社会統計学史研究』など多数の著書を残しました。翻訳書も多数あり、社会科学の発展に大きく貢献しました。


高野岩三郎は、社会統計学の発展に貢献しただけでなく、社会変革を求める強い意志を持った人物でした。彼の生涯は、日本の近代史における重要な一ページを飾っています。

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