大内兵衛

大内兵衛：日本のマルクス経済学者

概要

大内兵衛（おおうち ひょうえ）は、1888年に生まれ1980年に亡くなった、日本のマルクス経済学者である。彼は大正から昭和にかけて、特に財政学の分野で活躍し、日本学士院の会員でもあった。東京大学の教授として教育に携わり、後には法政大学の総長も務めた。

生い立ちと教育

兵庫県の三原郡高田村（現在の南あわじ市）に生まれた大内は、旧制洲本中学校や第五高等学校を経て、東京帝国大学法科大学経済学科を首席で卒業した。この卒業に際して、彼は1913年に銀時計を受け取っている。卒業後、大蔵省に入省し、経済政策に関与し初期のキャリアを築いた。

学問の道

1919年、東京帝国大学経済学部が新設され、その助教授に任命された。ここで財政学の教鞭を執り始めたが、1920年には森戸事件に連座し解雇される。その後、大原社会問題研究所に嘱託として迎えられ、マルクス主義を深く学ぶ機会を得る。さらに翌年には私費でヨーロッパ留学し、ハイデルベルク大学で学んだ。1923年には東京帝大に復職し、教授としての地位を確立した。

社会主義活動と戦後の影響

大内は1938年に労農派教授グループ事件で検挙されたが、1944年に無罪が確定するまで、公私にわたって多くの困難に直面した。1945年、彼はGHQの占領下においても重要な役割を果たし、証言台にも立った。戦後、東京大学経済学部に復職し、1949年には法政大学の総長に就任した。彼の在任中、国民皆保険や国民皆年金などの制度創設に大いに貢献した。

経済学への考察

大内は社会主義について逡巡しながらも、その実質を探求し続けた。彼は特にソ連や中国を視察し、社会主義を「客観的な科学」として評価する視点を持ち込んだ。しかし、彼の高評価にもかかわらず、ソ連の経済体制は崩壊へと向かい、彼もその流れを見届けることになった。

著作と遺産

大内の著作は多数あり、特に財政学に関する論文や著書は評価されている。彼の名を冠した「大内兵衛賞」や、法政大学の「大内山庭園」など、今日でもその影響は色濃く残っている。1970年には雑誌『世界』において「特殊部落」という表現が問題となり、謝罪を強いられる一幕もあった。

プライベートと家族

大内の次男も経済学者として名を馳せ、東京大学に勤務していた。彼の学問の遺産は次世代に引き継がれ、現在でも大内の思想が研究され続けている。

結論

大内兵衛は日本の経済学において重要な役割を果たし、彼の科学的探求と社会主義の知見は、現代の経済学者たちにも影響を与え続けている。

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