高頭仁兵衛

高頭仁兵衛（たかとう じんべえ）

高頭仁兵衛は、明治から昭和にかけて活躍した登山家、地主、実業家であり、その功績から「山の仁兵衛」とも称されました。1877年、新潟県で豪農の家に生まれ、幼少期から学問に励み、漢学や詩学を修めました。身体が弱かったものの、毎日長距離を歩くことで健康を取り戻し、その過程で登山に目覚めました。13歳で弥彦山に登った際の感動が、その後の登山への情熱を決定づけました。

学びと家業

16歳の時に花火の事故で大怪我を負い、治療のために上京。二松学舎で漢学を学ぶ中で、志賀重昂の『日本風景論』に感銘を受け、登山の気風を興すべきという思想に影響を受けました。19歳で家督を相続すると、北蒲原郡の豪農の娘と結婚。結婚生活は盛大で、その様子は当時の話題となりました。

登山への情熱と『日本山嶽志』

登山への情熱は、周囲の反対にもかかわらず衰えることはありませんでした。山に関するあらゆる資料を収集し、研究に没頭しました。その成果として、1906年に『日本山嶽志』を刊行。この書籍は、詳細な地理情報や歴史、伝説を網羅した、日本初の本格的な山の百科事典として、多くの登山家から愛読されました。

日本山岳会の創立と貢献

『日本山嶽志』の出版に先立つ1905年、高頭は日本山岳会の創立メンバーとなり、会の運営を経済的に支えました。年会費を10年分保証し、多額の寄付を続けたことは、後に会員たちの間で知れ渡ることになります。また、機関誌『山岳』の編集長を28年間務め、会の発展に尽力しました。登山禁止が解かれると、自らも山に登り、日本アルプスの探検に貢献しました。1933年には日本山岳会の会長に就任し、1935年には名誉会員に選ばれています。

その他の活動

登山活動のほか、高頭は実業家としても活躍しました。1901年には深沢信用組合を創立し、地域経済の発展に貢献。また、図書館の設立にも尽力し、多くの蔵書を寄贈しました。著書には『日本太陽暦年表』や『御国の咄し』があります。苗場山には恩師のレリーフを設置し、山岳会としても記念碑を建立しました。

晩年と遺徳

1958年、高頭は81歳で亡くなりました。生涯を郷土の発展と山岳振興に捧げ、その遺産は今もなお、人々に影響を与え続けています。彼の遺徳を偲んで、毎年「高頭祭」が開催されています。邸宅跡は河内公園として整備され、その功績を讃える頌徳碑が建てられています。高頭の残した功績は、日本の登山史において、重要なものとして語り継がれています。

主な著作

日本山嶽志
日本太陽暦年表
* 御国の咄し

これらの著作は、高頭の学識と情熱を今に伝える貴重な資料となっています。特に『日本山嶽志』は、復刻版が出版されるなど、現代でもその価値が認められています。

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