高齢者歯科

高齢者歯科は、特定の標榜科名としては認められていませんが、多くの大学病院などで院内標榜科や専門外来の名称として用いられています。その基盤となるのは、高齢者歯科医学・老年歯科医学といった学問体系であり、高齢者（一般的には65歳以上）を対象として、加齢に伴う心身の変化や、高血圧や糖尿病などの多くの基礎疾患を考慮した上で、適切な歯科医療を提供することを目的としています。

高齢者歯科では、以下のような点に特に配慮して診療が行われます。

全身状態の把握: 高齢者は複数の基礎疾患を抱えていることが多いため、全身状態を詳細に把握し、歯科治療が全身に与える影響を考慮します。
薬物相互作用の考慮: 服用している薬の種類や量を確認し、歯科で使用する薬剤との相互作用に注意します。
誤嚥性肺炎の予防: 嚥下機能が低下している高齢者に対しては、誤嚥性肺炎のリスクを考慮した上で、安全な歯科治療を行います。
口腔機能の維持・向上: 咀嚼機能や嚥下機能の維持・向上を目的としたリハビリテーションや、口腔ケアの指導を行います。
義歯の調整・管理: 義歯を使用している高齢者に対しては、義歯の適合状態の確認や調整、清掃方法の指導などを行います。
コミュニケーションの工夫: 高齢者とのコミュニケーションを円滑にするために、ゆっくりと丁寧に説明し、理解度を確認しながら診療を進めます。

関連学会としては、一般社団法人日本老年歯科医学会があり、高齢者歯科医療に関する研究や情報発信を行っています。

高齢者歯科を持つ医療機関の例としては、以下の施設が挙げられます。

北海道大学病院 歯科診療センター高次口腔医療センター高齢者歯科治療部門外来
東北大学病院 高齢者歯科治療部
昭和大学歯科病院 高齢者歯科
鶴見大学歯学部附属病院 高齢者歯科
松本歯科大学病院高齢者歯科外来
愛知学院大学歯学部附属病院 高齢者歯科外来
大阪歯科大学附属病院 高齢者歯科
大阪大学歯学部附属病院 咬合咀嚼障害系科咀嚼補綴科高齢者歯科外来
福岡歯科大学医科歯科総合病院 高齢者歯科

これらの医療機関では、高齢者の多様なニーズに対応できるよう、専門的な知識と技術を持った歯科医師や歯科衛生士が連携して診療にあたっています。

高齢者歯科は、高齢者が健康で質の高い生活を送る上で、非常に重要な役割を果たしています。今後、高齢化が進むにつれて、高齢者歯科のニーズはますます高まっていくと考えられます。

関連用語
歯科補綴学
歯科麻酔学
障害者歯科学
訪問歯科診療
補綴科
歯科麻酔科
障害者歯科
有病者歯科

関連学会
日本補綴歯科学会
日本歯科麻酔学会
日本障害者歯科学会
* 日本有病者歯科医療学会

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