髙平慎士

髙平 慎士（たかひら しんじ）

概要

日本の男子陸上競技選手で、主に短距離（スプリント）を専門としていました。1984年7月18日に北海道旭川市で生まれ、同地の春光小学校、六合中学校を卒業後、旭川大学高等学校に進学。大学は順天堂大学を経て、実業団の富士通陸上競技部で競技を続けました。

アテネ、北京、ロンドンと三大会連続でオリンピックに出場し、特に4×100メートルリレーでは日本チームの主要メンバーとして活躍。北京オリンピックでは銀メダル獲得（当初銅メダルから繰り上げ）、アテネ、ロンドン両大会でもチームの入賞に大きく貢献するなど、長年にわたり日本短距離界を牽引した選手の一人です。

主な競技キャリア

髙平選手は、高校時代からその才能を示していました。旭川大学高校3年生時には、全国高等学校総合体育大会の200メートル競走で優勝し、さらに国民体育大会でも400メートル競走を制覇しました。

順天堂大学に進学後も競技力を伸ばし、2004年の日本陸上競技選手権大会200メートルでは、オリンピック参加標準記録Aである20秒59をクリアして優勝を果たしました。この成績により、同年のアテネオリンピック日本代表に選ばれました。初めてのオリンピックとなったアテネ大会では、200メートル競走にエントリーしましたが、予選を突破することはできませんでした。しかし、4×100メートルリレーでは第3走者として出場し、日本チームの4位入賞という素晴らしい結果に貢献しました。

アテネ大会後も国際舞台での活躍を続けました。2006年のドーハアジア競技大会では、200メートルで銅メダル、4×100メートルリレーでは銀メダルを獲得するなど、個人・チーム双方でメダルを獲得しました。特に印象的な活躍は、2007年に母国・大阪で開催されたIAAF世界陸上競技選手権大会です。4×100メートルリレーに第3走者として出走した日本チームは、38秒03という当時のアジア記録および日本記録を樹立し、5位に入賞するという快挙を達成しました。

大学卒業後、2007年春に実業団の富士通に入社しました。翌2008年の北京オリンピックにも連続して日本代表として出場。4×100メートルリレーでは、前回大会に続き第3走者を任され、日本チームは銅メダルを獲得しました。このメダルは、大会後に金メダルを獲得したジャマイカチームの一選手のドーピング違反が判明したため、2017年に銀メダルへと繰り上げられています。

2012年のロンドンオリンピックにも、三度目の五輪代表として選出されました。日本選手権200メートルでの3位という成績を受け、200メートルと4×100メートルリレーの代表となりました。ロンドン五輪では、200メートルで予選を突破し準決勝まで進出。4×100メートルリレーでは、再び第3走者としてチームのバトンをつなぎ、日本チームの5位入賞に貢献しました。

選手としての特徴

髙平選手は、多くの筋骨隆々としたスプリンターとは異なり、比較的細身の体型をしていました。その走りは、細かいピッチで刻むタイプではなく、一歩一歩を大きく使うストライド型のスタイルが特徴的でした。また、カーブを走るコーナリング技術に長けており、100メートルから400メートルまで、短い距離から比較的長い距離までこなせる対応力の高さも持ち味でした。特に、ユニバーシアード競技大会で4×100メートルリレーを走ったわずか40分後に4×400メートルリレーにも出場し、チーム最速のラップタイムを記録したエピソードは、そのタフさと複数種目への適応力を物語っています。

私生活と引退

私生活においては、2010年1月1日に一般女性と結婚しています。この事実は、所属先の富士通から同年3月30日に公表されました。

長年にわたる競技生活に終止符を打ったのは、2017年9月23日に行われた全日本実業団対抗陸上競技選手権大会が最後となりました。

髙平慎士選手は、自身の持つ独特な走法と、特に4×100メートルリレーにおける安定したバトンパスとコーナリングで、日本代表チームの国際大会での躍進に欠かせない存在として、日本の陸上競技史にその名を刻んでいます。

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