髙橋萌木子

髙橋萌木子（たかはし ももこ）

1988年11月16日生まれ、埼玉県三郷市出身の日本の元陸上競技選手。専門は短距離走。

若き才能の開花

三郷市立早稲田中学校在籍時、髙橋萌木子氏はソフトボール部で活動しながら陸上競技に取り組んでいました。中学時代には全日本中学校選手権の200メートル競走で優勝を飾り、当時はソフトボール選手が短距離の全国大会で頂点に立ったとして、周囲に大きな驚きを与えました。本格的な陸上への転向前にもかかわらず、その非凡な才能を示しました。

競技スタイルの特徴

彼女の走りの最大の特色は、その広大なストライドです。男子選手に匹敵するとも言われたダイナミックなストライドは、特にレース後半での圧倒的な加速力を生み出し、数多くの逆転劇を演じました。いわゆる「後半追い込み型」の選手として知られていましたが、スタート技術には課題を抱えており、様々なスタートフォームを試行錯誤する中で、2008年の冬からはジャマイカ式のスタートを取り入れるなど改善に努めました。

高校時代の栄光

2004年に早稲田中学校を卒業し、埼玉栄高等学校へ進学すると、髙橋氏はソフトボールとの両立をやめ、陸上競技に専念することを決意します。この専念が飛躍の契機となり、高校3年間でインターハイ女子100メートル競走において、大会史上初となる三連覇という偉業を達成しました。また、2006年の同大会では200メートル競走でも23秒71を記録。惜しくも優勝は同級生の中村宝子選手に譲りましたが、この記録は当時の高校記録およびジュニア日本記録を更新する素晴らしいものでした。さらにリレー種目でもチームに貢献し、この年のインターハイでは学校の対抗得点に大きく貢献しました。同年9月の南部記念陸上では、100メートルで11秒54をマークし、こちらも正真正銘の高校記録保持者となりました。

大学、そして日本トップレベルへ

2007年、埼玉栄高校を卒業した髙橋氏は、系列校である平成国際大学に進学します。大学1年生にして、日本選手権の100メートル競走で初優勝を飾り、同年開催された世界選手権には日本代表として100メートルと4×100メートルリレーに出場する快挙を成し遂げました。2008年には国民体育大会の成年女子200メートルで自己ベストとなる23秒48で優勝。この大会では、当時無敗だった同学年のライバル、福島千里選手に土をつけました。2009年のグランプリシリーズ織田幹雄記念大会100メートルでは、追い風参考記録ながら予選・決勝ともに11秒24をマークし、日本記録（11秒36）をも上回る驚異的な走りを見せました。また、静岡国際の200メートルでは福島選手と共に日本新記録を樹立（記録保持者は福島選手）。同年の日本選手権では100メートルで2度目の優勝を果たしました。特筆すべきは、同年7月のユニバーシアード100メートルでの銀メダル獲得です。これはユニバーシアードの個人短距離種目（ハードルを除く）において日本女子選手として初のメダリストであり、全てのカテゴリーの世界大会を通じても、日本女子個人短距離種目（ハードルを除く）として初のメダリストとなる歴史的な快挙でした。大学最終学年の2010年には、日本選手権200メートルで初優勝。日本学生選手権でも100メートルと200メートルの二冠を達成するなど、大学陸上界のエースとして活躍しました。

社会人、そして現役引退まで

2011年、大学を卒業した髙橋氏は富士通に入社し、社会人アスリートとしてのキャリアをスタートさせました。社会人1年目は不調に見舞われる時期もありましたが、全日本実業団選手権では100メートルと200メートルの二冠を達成し、存在感を示しました。2012年には日本選手権100メートル、200メートルで3位に入り、ロンドンオリンピックの4×100メートルリレー日本代表に選出されます。しかし、オリンピック直前の合宿でのタイムトライアルの結果、リレーメンバーとしての出場機会は得られませんでした。その後は体調不良や怪我に悩まされる時期もありましたが、2014年には競技に復帰。2015年9月に富士通を退職した後も、鳥取県のトレーニング施設「ワールドウィング」に所属して現役を続けました。2020年には7年ぶりに日本選手権への出場権を獲得しましたが、大会前の記録会を最後に同年9月に現役を引退しました。

引退後、2021年1月に地元である埼玉県三郷市に戻り、現在はスポーツメンタルトレーナーの資格取得を目指し、セカンドキャリアを歩んでいます。

自己ベストは100メートル11秒32（2009年）、200メートル23秒15（2009年）で、これらは当時の日本歴代2位に位置する記録でした。

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