鬱ごはん

作品概要

『鬱ごはん』（うつごはん）は、漫画家・施川ユウキ氏が手掛ける日本の漫画作品です。秋田書店発行の雑誌『ヤングチャンピオン烈』にて、2010年3号（2010年2月16日発売）より現在も連載が続いています。各話は概ね4ページから6ページで構成されています。

物語の中心は、大学を卒業しながらも就職活動が進まず、フリーターとして日々を過ごす主人公、鬱野たけし。彼は自身の境遇や社会に対して常にネガティブな感情を抱き、内面での独白や嘆きを繰り返しながら食事をします。本作の作者である施川ユウキ氏は、これを「「美味そうじゃない飯を美味そうじゃなく食べる、今まで無さそうで無かった食漫画」」と表現しています。一般的なグルメ漫画が食欲をそそる描写に重点を置くのとは異なり、本作では主人公の心情と結びついた、どこか侘しさを感じさせる食卓の様子が独特のタッチで描かれています。

本作品は、秋田書店のウェブコミック配信サイト「マンガクロス」でも読むことができ、そちらでしか読めない描き下ろしの新作も公開されています。

登場人物

物語は主に主人公である鬱野たけしの視点から描かれます。彼は大学を卒業した後、就職活動をほとんど行わないまま就職浪人という立場にあります。連載開始当初は22歳でしたが、現実の時間経過と共に年齢を重ねており、単行本第1巻の終了時点では26歳、第71話で28歳、そして第96話においては30歳となっています。東京で一人暮らしをしており、実家からの仕送りはすでに途絶えているため、主な収入源は漫画喫茶でのアルバイトです。さらに、新型コロナウイルスのパンデミック以降は、フードデリバリーの配達員としても働くようになりました。

彼の性格は非常に内向的で、自己評価が低く、常に弱気な姿勢を見せます。強い被害妄想を持ち、極端に繊細なため、世の中に対して諦観や厭世的な態度を取りがちで、結果的に周囲との孤立を深めています。食事行為自体を単なる生命維持のための「作業」と捉えており、積極的にその味や楽しさを感じ取ろうとしません。神経質な一面がある一方で、うっかりミスも多く、食事の計画もなかなか思い通りには進みません。チーズは苦手なものの、ピザのように加工されたものはむしろ好んで食べるという意外な一面もあります。体型を気にしてダイエットに励んだり、放置している履歴書を作成しようと考えたりすることもありますが、いずれも意志の弱さから完遂できないでいます。

妖精は、鬱野たけしにしか見えないとされる存在です。黒い猫のような姿をしており、鬱々と悩む鬱野に対して、関西弁で容赦ないツッコミを入れたり、呆れたりする役割を担っていました。連載初期にはほぼ毎回登場していましたが、第66話「シュークリーム」を最後に姿を見せなくなり、鬱野自身もその不在を疑問に思っています。

叔父は、第3話「餃子」に登場した人物です。鬱野の近所に住む独身の叔父であり、同じく一人暮らしの鬱野を心配し、時折食事に誘ってくれることがあります。お酒が入ると、自己卑下のような愚痴をこぼす一面を見せます。

友人Nは、第16話「ステーキ」に登場しました。鬱野にとっては高校時代から現在まで続く、唯一の友人です。地元で再会した際には、それまで勤めていた会社を辞めていることが明かされました。

中島は、第29話「Charge&Go!」で初登場したキャラクターです。鬱野がアルバイトしている漫画喫茶の同僚で、大学生です。第33話「飲みニケーション」では、鬱野をどこか怪しげなサークルに勧誘しようとしました。しかし、第53話「一人もんじゃ」では、既に公務員への就職が決まったことを友人に話しており、物語上での登場期間は比較的短いようです。友人からは「ナカジ」と呼ばれており、鬱野以外の人間としては唯一、複数回登場しています。

書誌情報

単行本は、施川ユウキ氏の著作として、秋田書店より〈ヤングチャンピオン烈コミックス〉レーベルから刊行されています。2025年4月18日現在、第6巻までが発売中です。

第1巻 2013年4月19日発売 ISBN: 978-4-253-25557-8
第2巻 2016年8月19日発売 ISBN: 978-4-253-25558-5
第3巻 2019年3月19日発売 ISBN: 978-4-253-25559-2
第4巻 2021年12月20日発売 ISBN: 978-4-253-25585-1
第5巻 2023年10月19日発売 ISBN: 978-4-253-25619-3
第6巻 2025年4月18日発売 ISBN: 978-4-253-25814-2

本作は、従来の食漫画の枠に収まらない、現代社会に生きる一人の人間の孤独や内面的な葛藤を、「食事」という日常的な行為を通じてリアルに描き出す点が大きな特徴と言えます。主人公のネガティブな独白は時に共感を呼び、時に切なさを感じさせ、読者に深い印象を与えています。

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