鬼殺し (将棋)

鬼殺し戦法の概要

鬼殺し（おにごろし）は将棋の一つの戦法で、特に先手の奇襲戦法として知られています。この名称は、大正時代末期に大道詰将棋を手がけた野田圭甫による「可章馬戦法」と関連しており、戦法の特徴を表す言葉として使われています。「この戦法を使えば鬼も逃げ出す、鬼も倒せる」というキャッチフレーズのもと、鬼殺しは多くの棋士や将棋愛好者の間で名を知られるに至りました。

原始鬼殺し

原始鬼殺しの戦法では、先手はまず▲7六歩△3四歩とし、続けて▲7七桂と跳ねます。この手順に対し、後手が△8四歩と指した場合、先手は▲6五桂と続け、さらに手を進めます。手抜きを許さない鋭い攻撃があり、特に後手がそのまま△6四歩と指すことは、先手の攻撃力を引き出す要因となります。

この後も一貫して先手の優位を確保しつつ、局面を構築することができるため、先手にとって非常に有力な手として評価されています。ただし、後手は△6二銀という手段で対応し、先手の圧力を抑え込むことが可能です。そのため、鬼殺しは一種のハメ手としての性格を持つようになり、使用頻度は減少しましたが、プロの対局でも時折見られる手法です。

新・鬼殺し

米長邦雄によって考案されたのが、いわゆる「新鬼殺し」です。この手法では、先手の駒組みがより柔軟で、様々な局面に対応できる特性を持つように工夫されています。具体的には、初手に▲7六歩△8四歩と進め、早石田を含む形で駒を進めるのが特徴です。その後、後手の動きに合わせて戦局を展開させ、逃げ道を確保しつつ攻撃を加えることが可能となります。

この新鬼殺しは、持ち時間が限られた状況でも効果を発揮することがあり、アマチュアのプレイヤーにとっても非常に理解しやすいパターンとして定評があります。特に米長邦雄の著書では、この戦法が詳細に解説されており、多くの読者に親しまれてきました。

鬼殺し向かい飛車

さらに進化した「鬼殺し向かい飛車」は島朗によって考案された戦法で、相手の角道を止めずに向かい飛車を構えることで新たな戦術を持ち込みます。このスタイルでは、相手が角交換を選択した際には、素早く鬼殺しに変化させて仕掛けることが可能です。これにより、先手も非常に有利な形で攻撃を展開できる可能性が高まります。

島の著書にこの戦法が紹介されたことから、特にインターネット上の将棋界では一時的に多くの関心を集めました。例えば、藤井猛がこの戦法を用いて重要な対局で勝利した例もあります。

実戦での成果

将棋電王戦や数多くのプロ棋士同士の対局において、鬼殺しの戦法が実際に使用されることが確認されています。これにより、鬼殺しは一時的な流行ではなく、確固たる戦法としての地位を築いていることが伺えます。プロの対局での使用事例は、公式戦での名勝負として語り草になっています。

まとめ

鬼殺し戦法は、将棋界において非常に多様な戦法が存在する中でも特に注目を集めている戦術です。その強力な奇襲力や戦局の変化への柔軟な対応力は、今後もプロ棋士やアマチュアにとって魅力的な選択肢となり続けることでしょう。

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