鬼畜王ランス

『鬼畜王ランス』：アリスソフトが放つ地域制圧シミュレーションの金字塔

『鬼畜王ランス』は、1996年12月19日にアリスソフトから発売されたアダルトゲームであり、同社の人気シリーズ『ランス』の外伝的作品です。本作は、地域制圧型シミュレーションという新たなジャンルに挑戦したアリスソフトの意欲作であり、後の『戦国ランス』などにも繋がる重要な一作となりました。

ゲームシステム

プレイヤーは、王となったランスとなり、リーザス軍を指揮して世界統一を目指します。ゲームのメインは軍事とコミュニケーションで、所有する領地が増えるほど収入も増加します。序盤を過ぎると、魔人が頻繁に遊撃してくるようになりますが、プレイヤーから開戦しない限り、他の国家が攻めてくることはありません。そのため、入念な準備やイベントの消化に時間をかけることが可能です。

多くのキャラクターが条件を満たすことで部下になります。特に女性キャラクターは、ランス専用のハーレムでHなイベントを楽しむことができます。ハーレムに加入できるキャラクターの中には非戦闘員も含まれており、様々な組み合わせが存在します。ハーレムに入れたり、部下にしたりできない組み合わせも多く、その度に違ったプレイ体験が可能です。

マルチエンディング方式が採用されており、ベストエンドを迎えるには試行錯誤が必要です。プロローグで盗賊団を乗っ取った場合は「盗賊王」エンドとなり、短時間でゲームが終了するなど、ユニークなエンディングも存在します。また、主要な女性キャラクターには「幸・不幸モード」が設定されており、エンディング時にキャラクターが幸福になったかどうかが表示されます。複数の登場人物の間で幸福が両立しないことも多いため、注意が必要です。

あらすじ

物語は、ランスがヘルマンの僻地にある盗賊団を退治するところから始まります。しかし、ランスは盗賊団の首領を倒した後に組織を乗っ取り、好き放題していました。ある時、返り討ちに遭い、シィルが捕らえられてしまいます。部下を失ったランスは一人逃走しますが、かなみに見つかり、リアのもとに連れてこられます。ランスはシィルを取り戻すために、リーザスの軍隊を貸してほしいと要求しますが、リア女王はランスと結婚することでリーザス王となり、その力を行使できると提案します。こうしてランスはリアと結婚し、物語が展開していきます。

登場人物

本作には、ランスやシィルに加え、リーザス、ヘルマン、ゼス、JAPANなど、様々な国や地域のキャラクターが登場します。本作が初出となるキャラクターの中には、『ランス5D』以降のナンバリング作品にも登場しますが、設定が変更されている場合もあります。

開発背景

開発者のTADAは、シリーズが進むにつれて世界設定が複雑化していく中で、説明不足になることを懸念しました。そこで「もしランスが王様になったら」というif設定を基に、これまで構築してきた世界設定を一度に表現することにしました。開発初期には「ランス5」という仮称で呼ばれていました。

TADAは自分の記憶だけを頼りに、ネタを継ぎ足す形でシナリオを構築していたとインタビューで語っています。メイン原画は、前年にアリスソフトを退職したYUKIMIに代わり、むつみまさとが担当しました。ファンタジーに疎かったYUKIMIに対し、むつみまさとが正統派ファンタジーを好んでいたため、作品の世界観が強化されました。

開発の後半には、256色からフルカラーに移行しました。これにより、セーブ時間が長くなったと感じた開発者もいたようです。当時、Windows 95が普及し、PCゲームも一般化していましたが、ユーザーのプレイ環境は考慮されていませんでした。しかし、Windows 95で配列や関数が使えるようになったため、TADAが望んでいたシミュレーションゲームの開発が実現しました。また、Windows NT用のインストーラーが同梱されており、Windows NTやWindows 2000、Windows XPでもプレイ可能でした。

ランダムイベントが多かったため、完全なデバッグは断念され、ランダムイベント以外のデバッグのみで発売されました。音楽担当のShadeによると、当初は専用のマーチ曲がOP曲として作曲されましたが、没になり、クライマックス曲の「Rough Edge」が代わりに採用されたとのことです。

関連商品

ゲーム本体に先駆け、「鬼畜王ランス 音楽CD」が発売されました。また、「鬼畜王ランス公式設定資料集」がソフトバンクから出版されましたが、実際には攻略本としての内容が中心でした。さらに、尾山泰永と大宮ひかりによる「鬼畜王ランス外伝」がコミックとして連載されました。

反響と評価

本作は、売り上げと評価が非常に高く、当初の生産数を大幅に上回る注文が殺到しました。そのため、深刻な品不足となり、初回限定版が再生産された後、通常版が発売されることになりました。ライターの関根昌昭は、やりこみ要素やキャラクターの魅力を評価しましたが、キャラクターが多い割にはCGが少ない点を指摘しました。アダルトゲーム雑誌BugBugのアンケートでは、「美少女ゲームにハマるきっかけになったタイトル」の10位に選ばれています。

後世への影響

IGNの今井晋は、ポーランドのストラテジーRPG『Regalia: Of Men and Monarchs』のメインビジュアルが本作へのオマージュであると指摘しています。これは、アリスソフトの作品が海外でも影響力を持っていることを示唆しています。

『鬼畜王ランス』は、アリスソフトの歴史において重要な位置を占めるだけでなく、後のアダルトゲームやシミュレーションゲームにも大きな影響を与えた作品と言えるでしょう。

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