鬼首地熱発電所

鬼首地熱発電所

宮城県大崎市に位置する鬼首地熱発電所は、電源開発株式会社が管理・運営を行う地熱発電施設です。東北電力株式会社の送配電網を通じて、この地域の電力供給の一翼を担っています。

概要と立地

発電所が設けられているのは、鬼首カルデラの中心火山である荒雄岳の山麓です。この周辺には、火山ガスや高圧の蒸気、さらには温泉や間欠泉が多数噴出しており、これらを総称して「鬼首温泉」と呼んでいます。発電所では、特に荒雄岳の南東斜面、標高およそ530メートル地点にある「片山地獄」と呼ばれる区域から得られる地熱エネルギーを活用しています。

この地は、北上川水系に属する江合川の源流の一つにあたります。源流から大深沢を経て鳴子ダムへと注ぎ、そこから大崎平野を潤しながら太平洋へと流れ下る重要な水系の一部です。片山地獄の区域は発電所の敷地に含まれており、もしこの場所で新たな地熱活動による湧出などが発生した場合、下流側の水質に影響を与える可能性があるため、発電所側がその状況を報告する体制が取られています。

歴史と運転開始

発電所の敷地である片山地獄には、地熱発電が始まる以前から人の営みがありました。明治18年（1885年）から昭和28年（1953年）にかけて、この地では硫黄鉱山が操業しており、最も栄えた時期には800人もの人々が硫黄の採掘や精錬に従事していたと記録されています。

この歴史を持つ場所に、地熱エネルギーを電気に変える施設として鬼首地熱発電所が建設されました。昭和50年（1975年）3月19日に営業運転を開始し、これは東北地方においては3番目、そして日本全体では4番目に完成した地熱発電所となりました。運転開始当初の定格出力は12,500kWでした。

変遷と再開

運転開始から時を経て、発電能力の向上が図られました。平成22年（2010年）2月5日には設備の一部改修が行われ、定格出力が15,000kWに引き上げられています。しかし、同年10月17日には、高温の水蒸気が約30メートルの高さまで突然噴出する事故が発生し、作業員1名が尊い命を失い、もう1名が全身に重傷を負い病院へ搬送されるという痛ましい事故も経験しています。

設備の経年劣化などに対応するため、平成29年（2017年）3月末をもって発電所は一旦運転を停止し、大規模な設備更新工事が実施されました。この工事により、最新の設備が導入され、約6年の期間を経て、令和5年（2023年）4月2日に営業運転を再開しています。再稼働後の定格出力は14,900kWとなっています。新たなタービンや発電機には、地域の伝統文化である鳴子こけしをモチーフにしたデザインが施されており、発電所と地域社会とのつながりを象徴しています。

鬼首地熱発電所は、鬼首温泉の豊かな地熱資源を利用し、地域の安定した電力供給に貢献し続けています。

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