魅惑の人

『魅惑の人』：王室の闇に咲く愛と復讐

2024年初頭に韓国tvNで放送されたドラマ『魅惑の人』（朝: 매혹된 자들）は、壮大なスケールで描かれるロマンスミステリー時代劇です。激化する朝鮮王室と朝廷内の権力争いを背景に、過酷な運命に翻弄される男女の切ない愛と、それに絡み合う復讐の物語が展開します。俳優チョ・ジョンソクとシン・セギョンが主演を務め、その重厚な演技が視聴者を引きつけました。韓国での放送後、日本を含む世界各国ではNetflixを通じて配信され、多くのドラマファンに届けられています。

物語の始まり：清との関係と王室の苦悩

物語の舞台は、清国に屈服した後の朝鮮王朝。清の皇帝から突きつけられた和睦の条件は、明との断交、清の暦の使用、そして王弟を人質とすることでした。さらに、国王に万一のことがあれば、その弟が王位を継承するという過酷な命令も下されます。これにより、王弟であるイ・イン（演：チョ・ジョンソク）は清国へ人質として送られることになります。人質となる前に、兄であり国王のイ・ソン（演：チェ・デフン）と別れの謁見に臨んだインは、清国で皇帝の弟と囲碁を打ちながら数年を過ごしました。その間、兄ソンは弟の無事を願い、桃の木を植えて彼の帰りを待っていたのです。

王室の亀裂と運命の出会い

数年後、ようやく清国から帰国したイ・インでしたが、国王イ・ソンは以前とは変わってしまっていました。外戚であるキム・ジョンベ（演：チョ・ソンハ）らの甘言に乗せられ、インを王座を脅かす存在と見なし、冷たくあしらうようになります。時を同じくして、カン・ヒス（演：シン・セギョン）は身分を隠し、賭碁師として生計を立てていました。対戦相手から逃れる中で偶然出会ったのが、チナン大君、すなわちイ・インでした。囲碁を通じて意気投合した二人は、身分を超えた友情を育んでいきます。ヒスはインとの念願の囲碁対局を果たし、その際に「モンウ」という名を授けられます。

朝廷の陰謀と復讐の誓い

一方、朝廷では不穏な動きが加速します。朝鮮がチュ・ダラという間者を明国に送り、清国討伐を企てたという事件が発覚するのです。この事件の責任を問われ、ヒスの父であり領議政を務めるカン・ハンスン（演：ソン・ヒョンジュ）は、罪人として清国へ流刑されてしまいます。父が朝鮮を去って間もなく、国王イ・ソンは突如崩御。その直前、インの首を斬ろうとしていたソンは、遺言を残す間もなく息を引き取ります。兄の死によって予期せず王位に就くことになったイ・イン。そして、父を陥れた朝廷への復讐を決意したカン・ヒスは、自身の運命を変えるべく動き始めます。かつて深く心を通わせた二人の関係は、愛憎渦巻く復讐劇へと変貌していくのです。

登場人物たち

このドラマを彩る主要人物たちは、それぞれの立場と思惑を抱えています。

イ・イン（演：チョ・ジョンソク）: 囲碁の天才であり、清の人質を経て国王となる人物。幼少期から王大妃に王位継承者としての教育を受けましたが、兄ソンへの忠誠を誓っていました。しかし、帰国後に兄に疎まれ、囲碁を通じてヒスに惹かれます。兄の突然の死により運命が激変します。
カン・ヒス/カン・モンウ（演：シン・セギョン）: 領議政の娘でありながら、男装の賭碁師として生活しています。清の人質となった賎民を助けるためにこの道を選びました。父親から学んだ囲碁の腕前は確かで、インとの出会いを経て「モンウ」の名を得ます。父が政争に巻き込まれたことを機に、インへの復讐を誓います。
キム・ミョンハ（演：イ・シニョン）: 兵曹判書の息子で、文武両道に秀でています。王妃の外戚という立場で官職に就き、縁談相手であったヒスを巡ってインを敵視します。
トン尚宮（演：パク・イェヨン）: イ・インに仕える至密尚宮。かつては国王イ・ソンの寵愛を受けていましたが、ソンの死後、新国王となったインに忠誠を誓います。

その他にも、精神を病みインを憎むようになった国王イ・ソン（演：チェ・デフン）、王大妃の外戚として朝廷を牛耳ろうとするパク・ジョンファン（演：イ・ギュフェ）、その対立勢力であるキム氏の長キム・ジョンベ（演：チョ・ソンハ）など、多くの人物が複雑に絡み合い、物語をさらに奥深いものにしています。ヒスの父カン・ハンスン（演：ソン・ヒョンジュ）は、娘の幸せを願う一方で、避けられない政争に巻き込まれていきます。また、インを支える護衛武官のチュ・サンファ（演：カン・ホンソク）や、ヒスの協力者であるチュ・ダラ（演：ナ・ヒョヌ）、小間使いのチャグンニョン（演：ソン・サンウン）なども、それぞれの立場で二人の運命に関わっていきます。

『魅惑の人』は、朝鮮王朝時代の政治的な駆け引き、王室の裏側でうごめく陰謀、そしてその中で育まれる禁断の愛と、やがて復讐へと変貌する感情を繊細かつダイナミックに描き出した作品です。愛と裏切り、忠誠と野心、そして避けられない運命に立ち向かう人々の姿が、見る者を時代劇の世界へと深く引き込みます。

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