魏徴

魏徴（ぎ ちょう）

魏徴（580年 - 643年）は、中国・唐代初期の政治家で、字は玄成。その剛直な諫言で知られ、太宗李世民の治世を支えた人物として、歴史に名を残しています。

生涯

魏徴は、北魏に仕えた魏釗を曾祖父に持ち、代々官吏の家系に生まれました。しかし、若い頃は家が貧しく、正業に就くことなく、道士として出家。読書を好み、幅広い知識を身につけました。

隋末期に反乱が相次ぐと、彼は合従連衡の策に関心を抱き、反乱勢力の李密に仕えましたが、李密が王世充に敗れると唐に身を寄せました。唐に帰順するように各地を説得し、徐世勣を帰順させるなどの功績を上げました。

その後、竇建徳に捕えられましたが、唐が竇建徳を平定すると、唐に帰還し、太子李建成に仕えることになります。しかし、李建成は弟の李世民に殺害される（玄武門の変）という事件が起こります。魏徴は、李世民が功績を上げ、威信を高めることを警戒し、李建成に早めの対策を講じるべきだと忠告していました。

玄武門の変後、魏徴の直言を重んじた李世民は、彼を詹事主簿に任命し、その後、諫議大夫に昇進させます。李世民が帝位に就くと、魏徴は秘書監、侍中といった要職を歴任しました。

太宗との関係

魏徴は、その生涯において、太宗李世民に数多くの諫言を行いました。その数は200回を超えると言われています。太宗が癇癪を起こした時でさえ、魏徴は臆することなく直言を続けました。太宗は、魏徴の諫言を受け入れ、自らの過ちを改めることで、名君としての地位を確立しました。魏徴の家が質素であると知ると、宮殿を建てるはずだった木材を使って正堂を建てさせ、質素な寝具を贈るなど、その清廉な生活を尊重しました。

魏徴の死後、太宗は「人は銅を鏡として衣冠を正し、古を鏡として興亡を知り、人を鏡として得失を知る。魏徴を失った私は、一つの鏡を失った」と嘆き、その死を深く悲しんだと言われています。

業績と著作

魏徴は政治家としてだけでなく、学者としても優れていました。太宗の命により、『隋書』の序論を編纂した他、『梁書』、『陳書』、『北斉書』の総論などを執筆しました。彼の言論は、『貞観政要』に多く収録されており、後世に大きな影響を与えました。また、「人生意気に感ず」や「中原に鹿を逐う」などの句で有名な詩「述懐」を詠んだことでも知られています。

西遊記における魏徴

明代の小説『西遊記』では、魏徴は天界と現世を自由に行き来できる人物として描かれています。太宗と囲碁を打っている最中に、天帝の命令で夢の中で涇河の龍王を処刑したというエピソードは、広く知られています。

まとめ

魏徴は、その直言と諫言によって、唐の盛世を築く上で重要な役割を果たしました。彼の剛直な人柄と、太宗との深い信頼関係は、後世の模範となっています。政治家としての功績だけでなく、学者、詩人としての才能も持ち合わせ、多方面で活躍した人物でした。

参考文献

『資治通鑑』
『貞観政要』

関連項目

十思スクエア

外部リンク

魏徴：作家別作品リスト - 青空文庫

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